日本地理学会発表要旨集
2012年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P1313
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発表要旨
戦前期の台湾を中心とした農産物・食料貿易
フードレジーム論との関係から
*荒木 一視
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抄録
1.背景と問題意識 日本の食料供給が海外に大きく依存していることは論を待たず,大量の小麦や大豆,トウモロコシがアメリカ合衆国から輸入されている。また,大洋州や東~東南アジアからの食料輸入も少なくない。しかしこうした農産物・食料の輸入パターンは戦後形成されてきたものであり,戦前,戦中までの時期に同様なパターンがあったわけではない。同時に当時の日本が農産物・食料資源を自給できていたわけではない。植民地をはじめとした近隣諸国との,また植民地間での農産物・食料貿易が活発に展開されていた。それは今日のこの地域の農産物貿易のパターンとは異なるものであるが,第2次大戦終了まで,日本が国策として展開してきたものでもある。戦後の地理学においてこうした側面はこれまで充分に研究されてきたわけではないが,今日のわが国や東アジアの食料問題や貿易を考える上で,極めて重要な視座を提供してくれると考える。  そこで,当時日本の植民地支配下にあり,温暖な気候を利用した農産物・食料生産拠点であった台湾に着目して,当時のアジアでの農産物食料貿易を検討する。 2. 理論的背景と資料 戦前期の農産物・食料貿易を検討する上で参考としたのがフードレジーム論であり,とくに第1次フードレジームに着目した。第1次レジームの眼目は戦前のヨーロッパとヨーロッパ人ディアスポラ国家との間に成立した最初の基本的な食料の国際市場というものであり,こうした枠組みとの対比から当時の台湾,東アジアをめぐる状況を検討したい。欧米中心に議論が展開されてきた同論をアジアにおいて再検討する意義は大きいと考えたからである。  なお,当時の貿易状況の検討にあたっては,山口大学経済学部東亜経済研究所に所蔵されている戦前期の資料や貿易統計などを利用した。具体的には「臺湾の貿易」「臺湾貿易三十年對照表(明治29~大正14)」「臺湾貿易四十年表(明治29~昭和10)」「臺湾對支那,香港,及南洋方面貿易一覧(大正7,昭和7,8)」「臺湾對中華民國,満洲國,香港及南洋貿易一覧(昭和7~9)」「臺湾對南支,南洋貿易表(昭和10~15)」「日本・臺湾對南洋貿易統計」などである。
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