日本地理学会発表要旨集
2012年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 727
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発表要旨
銚子における夏季の地上気圧の50年間の経年変化と年々変動:熊谷との比較
*仁科 淳司三上 岳彦
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抄録

仁科・三上(2010)は,1990年以降の時別値データを用いて熊谷における夏季の地上気圧日変化曲線の特徴を検討した。これらの特徴のいくつかがヒートアイランド現象に起因するものかを判断する一つの方法として,まず,1961年まで遡って,1日4回(3時,9時,15時,21時)の地上気圧の経年変化と年々変動を検討した(仁科・三上 2011,以後NM11と表記する)。もう一つの方法として,他の地点で同様の解析を行い,NM11の結果と比較することがあげられる。本研究では,8月を中心に,銚子の地上気象観測日原簿を用いて,1961年~2010年の1日4回の地上気圧の値から,経年変化と年々変動を検討した。まず,銚子における8月の地上気圧は,どの時刻でもわずかだが上昇傾向にある(図省略)。しかし,15時で最小だった熊谷と異なり,上昇の割合はどの時刻でもほぼ同じである。次に,8月の日照時間と月平均地上気圧の経年変化及び年々変動(図1)を検討した。熊谷で示した1980年代の前後で5年間移動平均した両者の変動傾向が異なる事実(NM11の図2)は,銚子では不明瞭である。さらに,5年間移動平均値をもとに,銚子における8月の月平均地上気圧の経年変化(図2)を検討し,熊谷における経年変化(NM11の図3)と比較した。熊谷では,1980年代前半までは,地上気圧の5年間移動平均値が上昇する期間は15時の上昇量が小さく,下降する期間は15時の下降量が小さい。銚子でもこの傾向が見られるが,1980年代から3時の地上気圧下降量がしだいに大きくなり,1990年代からは21時で大きくなるという熊谷の特徴は,銚子では見られない。以上の結果は,NM11で得られた熊谷における解析結果が,都市化の進展が顕著でなく,かつ海洋の影響が強いと判断される銚子ではあてはまらないことを意味する。換言すれば,NM11で主張したような熊谷の地上気圧の経年変化や年々変動の成因に関する一連の考察を支持している。

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