日本地理学会発表要旨集
2012年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 722
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発表要旨
中信高原霧ヶ峰の南風について
*野口 泰生
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キーワード: 南風, 霧ヶ峰
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抄録
 中部日本のほぼ中央に位置し、南風の卓越頻度が他の地域をはるかにしのぐ(年平均で70%を超える)中信高原霧ヶ峰(1925m)を対象に南風の特徴について吟味する。使用した気象資料は、霧ヶ峰山岳測候所気象原簿(1943-48)、中部日本155地点のAmedasデータ、富士山測候所データの時別値などである。
 霧ヶ峰の風速は夏に最小(4~5m/sec)、冬に最大(8~9m/sec)となり、風速や季節変化は富士山の観測値に似ている。風向の月別頻度は南風が60~79%で、この中に西寄り(冬)と東寄り(夏)の明瞭な季節変化があり、この点も富士山など高層の風の特徴を示す。霧ヶ峰の南風(北風)に含まれる出現時間の特徴(昼夜の違い)を1945年の時別値で調べたが、出現時間(昼夜の違い、すなわち日変化)、南風・北風の継続時間、出現頻度に季節変化などの規則的な特徴は見られなかった。
 これに対し、南風が高頻度で出現する低地の観測地点(長野県奈川、飯島、松本、福井、富山県泊)で、南風の出現時間を調べると、いずれの地点でも出現時間に昼夜の違い(日変化)が明瞭であった。この日変化は日照時間(日照率)を減らすことによって減少するものの、日照率セ゛ロ(一日中曇天や雨天)にしても、日変化は完全には消失しなかった。
 中部日本のAmedas地点では、南風の出現時間に地域差があり、福井、泊、奈川では一年を通して夜間に卓越し、暖候期の昼間にはあまり見られなかった。同じ伊那谷の延長線上でも、飯島では一年中南風が出現し、午後の時間帯に多発するが、松本では午前中に南風出現時間のヒ゜ークがあり、日射の季節変化に伴うと思われる年変化が見られた。
 中信高原で卓越する冬の南風は、積雪分布や凍結融解地域を決定し、春の地温分布や土壌湿度の分布を通して、植物の分布に決定的な影響を与えていると思われる。
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© 2012 公益社団法人 日本地理学会
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