日本地理学会発表要旨集
2012年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 304
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発表要旨
エコツアーガイドの現状とその課題
北海道・知床を事例に
*平井 純子
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抄録

 エコツーリズムは、1970年代に発展途上国の環境保全と観光振興の両立を目指して生まれた概念である。日本では90年頃から、民間業者による原生の自然が残る地域での取り組みに始まり、90年代後半には民間の推進団体が設立され、エコツーリズムの普及が進んできた。このような動きを受けて、2004年より環境省にエコツーリズム推進会議が設置され、国レベルでのエコツーリズムの推進が開始した。また、07年6月には「エコツーリズム推進法」が成立し、08年4月より施行されるに至った。近年では地域の自然環境を配慮しつつ、地域の創意工夫を活かしたエコツーリズムの推進が推奨され、地域活性化の起爆剤としても注目されている。エコツーリズムの定義について、環境省は「自然環境や歴史文化を体験しながら学ぶとともに、その保全にも責任をもつ観光のあり方」としている。このエコツーリズムの概念にもとづいて行われるのがエコツアーであるが、これにはエコツアーガイドと呼ばれる存在が重要な役割を果たすことになる。エコツーリズムに期待されている、持続的な自然観光資源管理の実現に直接的に関わるエコツアーガイドであるが、果たすべき役割は明確化されているわけではない。エコツアーガイドには顧客サービス、環境教育、資源管理、地域貢献の役割が期待され、特に自然観光資源管理においては実質的な担い手としての役割と能力をもつことが期待される。これまでエコツアーガイドに注目した研究には、屋久島や神奈川県西丹沢地域、西九十九島等を対象としてものがあるが、事例は多くはなく、地域的偏りがあるため、研究蓄積が急務である。本研究では、日本においてエコツーリズムの概念にもとづいたエコツアーが早い時期より行われている知床を事例に、エコツアーガイドの現状とその問題点について調査を行った。現在、日本のエコツアーガイドはボランティアガイドが多く、また専業ではない場合が多いが、知床ではその割合が比較的大きいこと、自然に恵まれているが故の危険をもはらんでいるため、安全管理に対する高い意識が不可欠であることから、エコツアーガイドの現状を把握する地域として適すると考えられるため、調査対象地とした。調査方法として、冬季においてエコツアーを実施する5団体を抽出し、スノーシューによるウォーキングツアーに同行し参与観察を行った。エコツアーガイドの年齢や出身地、ガイド経歴と当日のガイド内容について検討し、その現状と問題点について考察した。詳細は当日報告する。

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