日本地理学会発表要旨集
2012年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P1111
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発表要旨
ブータン南部ゲレフ地域の断層変位地形
*熊原 康博小森 次郎Jamyang Chophel橋爪 誠
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抄録

1. はじめに 長さ2500kmに及ぶヒマラヤ前縁には,インドプレートとユーラシアプレートのプレート境界に沿って活断層が発達する.これまで,パキスタン,インド,ネパールにおいては,多くの研究によって,その分布および変位様式の概要が明らかになっている.しかし,東西350kmのブータンとインドとの国境域は,Nakata (1972)やYagi et al. (2002)があるものの断片的な情報にとどまり,他のヒマラヤ周辺地域と比べ活断層に関する情報が乏しい地域である. 我々は,2010年8月の3週間にわたり,ブータン政府関係機関にて空中写真判読をおこない,ブータン南部の活断層の分布および変位様式について明らかにした.その結果,ブータン南部のゲレフ(Gelephu)周辺において,断層変位地形が明瞭に発達することが明らかとなった.本発表では,2011年3月に,ゲレフ周辺の現地調査を実施した結果を報告する.
2. ブータン南部の断層分布の特徴 空中写真判読により,明らかになった点は以下の通りである.1)主に東西走向の断層が多い.2)ブータン南部全体に連続する断層はなく,長さ30kmより短い断層からなり,地域によっては東西走向の断層が4~6条にわたり平行して分布する.3)東西走向の断層のうち,平野と山地の境界では北側隆起の断層変位を示すが,山地内は南側隆起の断層が多い.4)山地内の断層には,北西-南東走向の断層は右横ずれ変位,北東-南西走向の断層は左横ずれ変位をもつ断層が認められる. 以上の特徴は,同じプレート境界にあたるネパール南部の断層発達とは異なる.
3. ゲレフ周辺の断層変位地形の特徴(図1) ゲレフ周辺では,北方の平野と低ヒマラヤ山地との境界からゲレフの東部にかけて連続的に発達する.ただし,ゲレフ北西部では断層線は一本であるのに対し,ゲレフの北東部から東部では断層が5条以上に平行に発達するなどの違いが見られる. ゲレフの東を流れるマオ川の両岸では,山地から平野へ出る箇所で,少なくとも高さの異なる3段の段丘面が累積的に,北側隆起の変位を受けている.またDanabariから東では,5面以上の段丘面が逆に累積的に北落ちの断層変位を受けていることが明らかになった.また,山地側の断層トレースには低い段丘面上に断層変位が認められないことから,断層変位の位置がより平野側へ移動している.

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