抄録
地域分権的なイギリス(イングランド)の地理教育は,1980年頃から環境・社会問題を積極的に扱うようになった。その傾向は1991年に制定された史上初の全国共通カリキュラム『ナショナル・カリキュラム地理(初版)』施行で表面的には途切れたが,91年以降3回にわたる改訂で再び顕在化した。何よりも,教室での授業や教材といった実践レベルでは,一貫して重視されていたといえる。本発表では,そのような底流を示す一例として,現代社会における大きな環境・社会的論争問題である原子力発電所問題・事故が,イギリスの中等地理教材等でどのように描かれているのを報告する。