抄録
1.はじめに
本研究は,地理情報システム(GIS),全地球測位システム(GPS),リモートセンシング(RS)の技術を統合し,筑波大学を事例にキャンパスGISを構築することで,大学が抱える生活環境の問題点を把握するとともに改善策を立案,提示し,より快適なキャンパスライフの実現に資することを目的としている.筑波大学筑波キャンパスは日本で第2位の面積(約258ha)を有するので,一つの地域としてとらえることができる.様々なキャンパス情報を可視化し,学生のみならず地域住民もWebで容易に閲覧できる形で公開することの意義は大きい.
キャンパス内では違反駐輪,歩行危険場所の存在,避難所の設置計画など,様々な地理的諸問題・課題が生じている.本研究では,地理学的観点から空間分析を行い,これら諸問題を空間可視化によりあぶり出し,その解決を試みる.
2.データベースの構築
本システムは基図データ(3種),大学の設備データ(16種),学生が自ら調査し取得した人文データ(4種),RSにより得られた緑地環境(画像)で構成されている.紙媒体やCADなどで大学が管理している設備データは, ArcGISを援用してGISデータに変換した.また,大学が保有していない設備情報や人文データはフィールドワークを行い紙地図に記録,あるいはGPSやPDAでデータを取得した.
3.可視化と分析
「筑波大学キャンパスGIS」では,属性表示,距離測定,地物検索などにとどまらず,次のような空間分析も可能である.
・時空間分析(違反駐輪を例に)
・バッファ生成(歩行危険区域を例に)
・GISとRSの融合(緑度を例に)
・ストリート方式による建物の住所作成
4.意義と有用性
本研究で構築したWebGISは現在,筑波大学のサイトで公開中である(http://giswin.geo.tsukuba.ac.jp/sis/jp/webgis.html).現在,集合知の概念を取り入れ,学生が旬な地理空間データを自主的に取得,提供し,それを直ちにWebに反映可能なシステムの構築を進めている.このWebGISを通して,キャンパスの美化運動が展開され,生活環境の向上にむけて大学・教員・学生が連携する体制が醸成されることを期待している.