日本地理学会発表要旨集
2012年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P1220
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発表要旨
Terra/ASTER夜間熱赤外画像により捉えられた関東平野西部山地斜面における斜面温暖帯の特徴
表面温度と地形・植生の関係について
*紺野 祥平泉 岳樹高橋 日出男
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抄録
 関東地方は日本最大の関東平野を有し,平野の西と北側は2000m級の山地に囲まれている.冬季晴天静穏な夜間,山地中腹斜面からの冷気流出と平地での気温逆転層の発達に伴い,平野を取り囲む関東山地の中腹に斜面温暖帯が形成される.
 斜面温暖帯にあたる地域は,夜間の気温低下が平野部よりも小さいため,古くから果樹栽培地として利用され,斜面温暖帯研究は農業気象の分野において重要なテーマとされてきた.近年リモートセンシング技術の進歩により,衛星画像による広域かつ詳細な地表面温度情報の取得が可能となり,その技術は斜面温暖帯の把握にも活用されている.
 本研究では,複数の地理情報データの総合的な解析に力を発揮するArcGISを用いることにより,これまでの研究で着目されてきた,熱赤外画像の標高,土地利用との関係に加え,新たに植生図と植生指数(NDVI),尾根線・谷線の分布図を重ね合わせることにより,斜面温暖帯への地形的な影響と樹種の違いあるいは植生の多少の影響を把握した.
 その結果,晴天静穏夜間,山地中腹の標高200m~400m付近の広い範囲にわたって明瞭な斜面温暖帯が形成され,尾根にあたる部分は谷よりも表面温度が2℃~4℃程度高く,平地よりも8℃~10℃程度高いことが明らかとなった.一方,樹種(主に常緑針葉樹と落葉広葉樹)およびNDVIによる違いは不明瞭で,熱赤外画像の表面温度は地上気温観測値と相関がみられたことから,表面温度分布はその場所の気温の影響を大きく受けているものと考えられた.
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© 2012 公益社団法人 日本地理学会
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