日本地理学会発表要旨集
2012年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P1217
会議情報

発表要旨
2011年夏季節電による東京都心部のヒートアイランド緩和効果
*三上 岳彦大和 広明森島 済赤坂 郁美
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
 2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震(M9.0)と巨大津波によって引き起こされた福島第一原子力発電所の事故がきっかけとなって、関東地方の電力供給量は大幅に低下し、東京電力では夏季の電力需要を抑制するための節電を企業や一般家庭に呼びかけた。その結果、とくに夏季日中の電力需要が大幅に減少した。人工排熱の主要な部分を占める電力需要量の減少で、都市のヒートアイランドが緩和された可能性が想定される。本研究の目的は、2011年夏季の電力需要量減少が首都圏ヒートアイランドに及ぼす緩和効果を観測データに基づいて定量的に明らかにすることである。
  筆者らの研究グループでは、2006年夏季から東京首都圏の約200カ所(小学校の百葉箱)に自動記録式の小型温度計を設置し、10分間隔で連続的な気温観測を行っている(広域METROS)。そこで、この観測データを用いてヒートアイランド強度(都心と郊外の気温差)を求め、その日変化を2010年(平年)と2011年(節電年)で比較し、電力使用量の減少によるヒートアイランド緩和効果を客観的・定量的に算出する試みを行った。電力使用量は、2010年と2011年の毎日の時刻別電力需要量(東京電力提供)を用いた。
  関東圏人工排熱マップをもとに、都心部(Urban)6地点と郊外(Rural)6地点を選び、2010年と2011年の7月(31日間平均)におけるヒートアイランド強度(HI強度)の差(2010-2011)を時刻別に求めた。相対的に電力削減率の低い(2010年比で10%以下)夜間から早朝の時間帯のHI強度(気温)低下は0.2℃以下であったが、節電率の高かった午後の時間帯(2010年比で17~18%)では、最大0.65℃(15時)のHI強度低下が確認された。
特に、1日の日照時間が8時間以上の晴天日(典型的な夏日)に限って同様の解析を行った結果、午後3~4時の時間帯に約1.15℃のHI強度低下が生じたことが明らかになった。
著者関連情報
© 2012 公益社団法人 日本地理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top