日本地理学会発表要旨集
2012年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P1203
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発表要旨
航空機リモートセンシングデータを用いた緑被率推定
-杉並区を対象にして-
*泉 岳樹熊谷 聡松山 洋
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抄録
 本研究では,緑被率と高い相関関係にあるNDVI(正規化植生指標)を用いて高精度かつ簡便な緑被率の定量的推定手法を確立し,従来の緑被判読調査に代わる新たな調査手法を提案することを目的とした.緑被率を算出するためには,緑地と非緑地を分ける必要がある.そのために,NDVIを用いて緑地と非緑地を判別する閾値を設定した.可視域と近赤外域を持つ航空機リモートセンシングデータ(2003年4月撮影)から植生サンプル・非植生サンプルの被覆別NDVIデータを取り,これらデータを分割するNDVI閾値を判別分析から求めた.NDVI閾値設定の検証として,NDVI閾値の増減に伴う緑被率の変動と,サンプル数の増減に伴うNDVI閾値の変動を分析した.結果,NDVI閾値が0.001増加すると緑被率は約0.05%減少し,NDVI閾値の標準偏差はサンプル数100を超えると収束することがわかった.次に,NDVI閾値を用いた判別精度を確かめるためCross Validationを行った.得られた推定手法の精度は90%を超えており,適切な判別が行われていることがわかった.以上の検証からNDVI閾値を設定するには最低100サンプルの判読を行えば,もっともらしい緑被率の値と誤差±1%での緑被率推定が可能と言える. 以上の解析手法で確立した緑被率推定手法を用いて杉並区全域の緑被率を求めると23.49%の値を得られた.同領域内で2002年度に行われた杉並区みどりの実態調査では,緑被率が21.84%であったことから,この値と比較すると1.65%の差で推定することが出来た.これより本研究の緑被率推定手法は,判読作業が簡便であり客観性の高い緑被率の定量的推定手法であると言える.
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© 2012 公益社団法人 日本地理学会
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