抄録
近年,外来魚による在来魚への影響が深刻な問題となっている.滋賀県内のため池では生態系への影響の他に,駐車車両による周辺道路の占領,「あぜ道」「池の崖」の崩落,持ちこまれたゴミの散乱など,管理者や周辺への被害が問題視されている.しかし,ため池における外来魚の分布に,どのような外的要因が影響しているのかはまだ明らかにされていない.そこで外来魚が生息していないため池の生態系を守るため,立地特徴から,どのような条件のため池に外来魚が生息しているか,あるいはしていないのかの傾向を示す.
滋賀県水産課より「河川,ため池等における外来魚の生息実態調査に関するデータ」を入手し,ため池内部の要因(水草の有無,水質,水際の状況,流入支流の有無,コイ・フナの生息)を把握する.ため池の現地調査によって,周囲の要因(釣り場の有無,道路から池が確認できるか,車で入り込めるか,立入禁止かどうか,池の種類,フェンスの有無,看板の有無)と外来魚生息の有無を把握する.次にGISを用いて,ため池を有する地域からみた要因(人口密度,学校からの距離,駅からの距離,スーパー・コンビニからの距離,土地利用)を把握する.これらのデータを基に,クロス集計を用いて分析を行う.そして,どのような立地特徴のため池に外来魚が生息しているかの傾向を明らかにする.
ため池内部の要因ではどの項目でも有意差は出なかった.ため池周囲の要因では,「車で入り込めない」「道路から池が確認できない」「釣り場の有無」の項目で有意差があり,「道路から池が確認できる」「立入禁止かどうか」「遊び・ごみに関する警告看板あり」の項目でも有意差があった.ため池を有する地域からみた要因では,周辺の土地利用が「田」のため池では,有意差があった.これらの結果より,外来魚が生息している傾向のため池は,「道路から池が確認できる」「立入が禁止されていない」「釣り場がある」「遊びに関する警告看板がある」「ごみに関する警告看板がある」ため池.生息していない傾向のため池は,「車で入り込めない」「道路から池が確認できない」「立入禁止」「釣り場がない」「周辺の土地利用が田である」ため池であった.外来魚の生息には「ため池周囲の要因」が大きく関係している.釣り人や人の利用に関する項目に有意差が出たことより,外来魚の生息には,密放流等による人為的な影響が関係していると考えられる.