抄録
1980年代以降,「人と水とのふれあい」を標榜した親水施設の整備が全国的に進められている.既往の研究ではこれらの施設や景観に対し,定型の形容詞句を用いたSDアンケート調査法により,空間的価値や快適性の認知構造等に関する知見が提示されている.しかし,採用する用語の種類や数量等により解釈に制約が生じることや,施設計画・改修に際しての優先度を検討することが困難であったこと等が課題として挙げられる.そこで,本研究では,被験者の自由意思による景観写真撮影により得られた写真データをもとに対象物の特徴を検討し,これをふまえてCS(Customers Satisfaction:顧客満足度)分析を援用することにより,改善が必要な施設・空間のコンテンツに対する希求度を明らかにすることを目的とする.本研究で得られた被験者の撮影した景観写真からは,人工造形・構造物について良悪の評価が分かれたほか,施設改善計画においては,都市内部における自然のある空間として「生態環境」の整備に最も高い改善要求がみられた.また,遊具の整備や歩行配慮など,都市施設としての利用向上や安全性に配慮した整備が求められていることが明らかになった.