抄録
地理学は空間(土地,地域)の性質を明らかにする学問であり,その知識を防災・減災に具体的に役立てる方法として,ハザードマップの作成・公開は大きな意義を持つ。このため,災害対応委員会は発足当初,学術大会時のシンポジウムの企画においてハザードマップを取り上げるなどしてきた。
一方,行政による各種のハザードマップの整備は最近進んでおり,今回の東日本大震災の被災地に関しても,多くのハザードマップが作成されていた。これらには,空間の性質として災害現象発生ポテンシャルや対災害脆弱性を表現しているものと,特定の想定の下での予測結果を表現しているものがあるが,これらの内容や広報のされかたが被害の軽減にどのように役だったか,あるいは役立たなかったかを検証し,今後の防災対策にフィードバックしていく必要があろう。放射能汚染の災害はなお進行中であるが,これについても,マッピングされた情報の重要性が指摘できる。地理学は,このような課題に取り組むべきであると考える。
そこで,本シンポジウムでは,東日本大震災を踏まえ,今後のハザードマップのあり方とそれに対する地理学の貢献のあり方について改めて検討する。