抄録
近年、琵琶湖や内湖に流入する河川において、治水や利水のための整備が進められ、河川環境が大きく変化した。特に、堰等の河川構造物は、魚類等の生き物の移動経路を寸断するため、生息環境への影響が懸念されるため、琵琶湖流域における河川の変遷および上下流の連続性について、マクロ的に把握した。
その結果、湖辺域における内湖と河川・水路分布については、明治時代は、内湖に接続する水路が多く、流路の分布は、琵琶湖-内湖-河川・水路のつながりが明確だった。一方、現在は、琵琶湖に接続する河川・水路が多く、流路の分布は、直線的形状を示すものが多くなっていた。河川の上下流の連続性を阻害する可能性のある取水堰等については、1968年と2006年の資料で調べたかぎりでは、施設数は、1968年のほうが多かった。しかしながら、1968年当時の施設は、流れの一部を人力で堰き止めて作った小規模な井堰が少なくなく、生き物の移動への阻害度は低かったと考えられる。それに対し、現在の取水施設の大部分は、近代化・大型化し、頭首工やダムにより流れを大きく阻害するものであった。さらに、近年は、取水目的以外の多数の河川構造物が存在するが、下流から上流まで構造物が数多く分布し、落差によっては魚類等の移動を阻害する可能性のある構造物が多くの河川で存在していた。