抄録
人口減少の影響は,大都市圏においては外縁部でいち早く現れ,社会的・経済的な地域再編を生起すると予想される。本研究は,東京大都市圏外縁部を事例として,人口減少下にある都市地域の社会・経済的再編を明らかにし,今後の地域社会維持へ向けた課題を検討することを目的とする。分析では,統計分析による人口変化,アンケート調査に基づく地域住民の社会生活行動から社会的変化,中心市街地での商業活動から経済的変化を明らかにする。事例地域は,東京都心から北西60~70km圏に位置する熊谷市,深谷市,寄居町の2市1町に着目した。
熊谷市と深谷市の中心部では高齢者のみ世帯の割合が相対的に高く,近隣住民との交流の機会も減少しており,また,消費行動においても近隣のスーパー利用が一般的となっている。一方で,高齢者のみの世帯の割合の高さや,若年人口も減少する中心市街地では,来街者が減少し,商業施設売り上げが減少するだけでなく,経営者の高齢化も進んでいた。両都市の中心部は,都市機能が集積する一方で,同居家族のサポートを期待できない高齢者のみ世帯の割合が高い状況に置かれており,日常生活のレベルの生活支援から,より専門的な医療・介護に至るまできめ細かな取り組みが,今後の中心市街地を対象とする都市施策に求められているといえる。