日本地理学会発表要旨集
2012年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 621
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発表要旨
ハイマツの年枝生長量と年輪生長量の比較
*安田 正次
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抄録
ハイマツ(Pinus  pumila)は日本列島の山岳上部に多く分布し森林限界上方の大きな部分を占めている。ハイマツは1年に一節だけ枝が慎重する単節型で、シュートの伸長は夏を中心とした単年で完結し、次年以降には伸長しない事が知られている。ハイマツはシュートが伸長する時、年枝痕が残ることから、この年枝痕間長を計測する事で毎年の伸長量を遡って知る事が出来る。 一方、スギやヒノキのような針葉樹の生長量変動については、年輪幅を調べる手法が多くとられてきたが、ハイマツに関しては、年輪の解析事例はほとんどなく、年輪成長量の変動傾向についてはほとんど明らかになっていない。 発表者は群馬県・新潟県県境で生育していたハイマツ10本を伐採し、その解析から、ハイマツの年輪生長量は夏の気温と負の相関がある事を明らかにした。年枝生長量の研究では、夏の気温と正の相関がある事が知られていることから、年枝生長量と年輪生長量は相反する性質を持っているという事になる。 そこで、本研究では年枝生長量と年輪生長量の関係性を明らかにするために、ハイマツの伐採木の両者を比較して両者の関係を検討した。その結果、年枝成長と年輪生長量同士の比較を行った結果、10個体のうち、4個体で弱い負の相関が、4個体で弱い正の相関が認められた。既存の研究によるとハイマツは夏期に生産した物質を一旦幹に蓄える性質があると報告されている。そこで、当年の年枝生長量と前年の年輪生長量を比較した。その結果、無相関だった2個体に関しては1個体が正の相関が、もう1個体が負の相関がみとめられ、その他の4個体でも相関係数が上昇した。以上から、年輪生長量と年枝生長量との間には常に正の相関が認められないことが明らかとなった。それらの関係は個体毎に異なっていることから、それぞれの個体の生育立地の環境を考慮する事が必要となるだろう。また、年枝生長量と年輪成長量の間には1年のズレがある事から、年輪の解析と気候条件の比較には生産物質の配分に関する検討を行う必要があるだろう。
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© 2012 公益社団法人 日本地理学会
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