抄録
本研究では東京30km圏内に位置し,1960年代に虫食い状の乱開発によって都市化した埼玉県富士見市関沢地区を事例に地主の土地利用,特に賃貸不動産を中心にその変遷を明らかにする。関沢地区に土地を所有する地主の賃貸不動産の建設数の推移を用途別にみてみると,1960・70年代はアパートや貸家など小規模なものが多い。建設資金は土地の売却資金が充てられ,管理も自己管理か地元の不動産仲介業者に任せることが多かった。1980年以降は,比較的広い土地を利用した駐車場や多額の建設資金を必要とする賃貸マンション,大型のアパート,ロードサイド型の店舗などになり,建設資金は金融機関からの借入金によって賄われるようになる。また,管理なども地元の不動産仲介業者から農協,全国展開の建設・不動産業者へと移っていく。こうした地主の土地利用の変化から,地主にとって賃貸不動産は単に現金収入を確保するという位置付けから,地価の上昇による税負担の増大や税制の変化,融資の拡大,住宅需要やニーズの変化などによってより複雑化し,資産の保持という位置付けへと変化したとみることができる。