日本地理学会発表要旨集
2012年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 612
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発表要旨
大雪山中央部、高根ヶ原周辺の氷河地形
*髙橋 伸幸長谷川 裕彦佐々木 明彦小久保 裕介小疇 尚
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抄録

北海道中央部の大雪山高根ヶ原周辺(標高約1700〜2000m)には、堆積物から構成される小丘状の地形や周辺部の岩屑とは不調和な大きさの巨礫が分布する。これらの地形や堆積物の成因は、現在の営力では考えられないことから、過去の氷河作用によるものと見られる。
・小丘Aと堆積物 標高1880m付近には、南東側に凸型の弧を描く比高10m余りの小丘(A)が見られる。その表層部は、スコリアを含む砂礫からなり、径数mの巨礫も散在する。Aの南側にも小丘が存在するが、その表層部は、高根ヶ原を構成する板状節理の発達した基盤岩から供給された扁平な岩屑によって覆われ、巨礫は分布しない。また、スコリア礫もほとんど見られない。したがって、小丘Aを構成する物質は、現地性のものではない。その成因としては、小丘Aの北側に越年性雪田が分布することから、現在よりも寒冷な時期に、この付近を涵養域として発達した氷河の作用である可能性が大きい。また、小丘Aの北西側に沿って数本の流路跡が見られるが、これらは、氷河縮小時にその縁辺で形成された融氷河水路と考えられる。これらのことから、小丘Aは、氷河により形成されたモレーンであると考えられる。その形成時期に関しては、表層部に含まれるスコリアが、調査地域の北西方に位置する旭岳あるいは熊ヶ岳の完新世における火山活動により供給された(斉藤、1995)と考えられることから、モレーンの形成時期もその頃であろうと見られる。
・巨礫と凹地形 標高1845m付近には、礫径5mに及ぶ巨礫群が分布する。高根ヶ原上の現地性物質は、主に扁平な岩屑からなり、その礫径は数10cm程度であることから、これらの巨礫は現地性のものではない。また、巨礫を構成する安山岩は、比較的粗粒な斑晶をもち、角閃石を含んでいる。この岩石学的特徴は、北部の白雲岳周辺を構成する安山岩の特徴(斉藤、1995)と類似している。これらのことから、巨礫の供給源は、白雲岳周辺である可能性が高く、その運搬営力も、やはり氷河作用であると考えられる。また、この周辺には、亜角~亜円礫を多く含む厚さ数mの堆積物が見られる。さらに、その堆積物分布域には、直径10mを超える複数の凹地が分布している。ここでも現在の営力下でこれらの成因を考えることは難しい。したがって、ここでも過去の氷河作用を想定される。凹地に関しては、ケトルホールの可能性がある。

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