日本地理学会発表要旨集
2012年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 723
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発表要旨
夜間の二次元局地気流モデルの開発と陸風・斜面下降流への適用
洞爺湖を例として
*加藤 隆之日下 博幸
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抄録

 熱的局地循環の一種である湖陸風は、山地からの直接の影響に加えて、山谷風や一般風の影響も受け、海陸風とは異なった性状を呈しているといわれている(枝川・中島1981)。周囲に急峻な地形をもつ国内の湖で観測された陸風循環(e.g.,Kato 1981)は、斜面下降流をとらえていた可能性が大きい。本研究では、湖の局地循環をシミュレーションする二次元の気流モデルを構築し、洞爺湖を例とした早朝の局地風の熱的・地形的効果についての理想化数値実験を行う。そして、従来の観測で得られた陸風が本当に陸風であったかどうか検証する。
 開発した数値モデルには二次元非静力学ブジネスク近似の方程式系を採用した。数値モデルの離散化には有限差分法を用い、直交座標系のもとスタガード格子を用いて計算を行った。圧力解法にはフラクショナルステップ法を使用した。また、時間スキームに省メモリー型三次精度ルンゲクッタ法、空間スキームには二次精度中央差分を用いた。圧力に関するポアソン方程式の解法には、ガウス・ザイデル法を使用した。境界条件には側面の風速について勾配0条件、上部はフリースリップとした。圧力の境界条件はノイマン条件を適用し、階段地形においては、水平方向境界のみ圧力勾配を0として扱った。また上空には、重力波の反射の影響を防ぐためにRayleigh dampingによるスポンジ層を設定した。
 計算対象領域を北海道洞爺湖北東-南西断面20km、上空2500mとし、Kato(1981)の観測値を用いたコントロール実験を行った。実験の結果から、湖が存在している場合、湖中心への収束構造がみられ、中島付近で上昇流となったのち、高度200m程度で反流となる構造がみられた。一方、湖をなくした場合には湖中心への収束はみられず、洞爺湖一帯は冷気湖に覆われる。また、大規模な山風循環が発生するため、コントロール実験でみられた湖盆地形内で湖中心へと向かい、上昇して反流となる循環は生じていない。このような結果から洞爺湖における早朝の局地循環は、斜面下降流のみでは発生せず、湖の熱的効果が加わることで発生するものであると考えられる。

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