抄録
2011年8月、日本学術会議は、高校地理歴史科教育に関する抜本的な改革として「新しい高校地理・歴史教育の創造―グローバル化に対応した時空間認識の育成―」を公表し、「地理基礎」、「歴史基礎」の新設科目各2単位の必修化を提言している。 この「地理基礎」では、現行の地理Aをベースにしながらも地域づくりや防災・環境への学習に重点が置かれ、地図やGISを利活用した地理的スキルの育成が重視されている。本稿では、教育情報化を踏まえながら「地理基礎」における地図/GISの段階的学習に関して考察する。 学校と地域におけるGISの利活用は、地域防災力を向上させることにも寄与する。東日本大震災の教訓を生かすためには、津波や地震に関する科学的知識をベースに、地域の地形や道路状況を総合的に判断して避難するという判断力が求められている。地図/GISを利用したDIG(Disaster Imagination Game:災害図上訓練)を通して、地域の災害脆弱性を子供達が理解しておれば、地域防災の担い手育成にもつながる。 地理基礎で想定されている現段階でのGISを利用した授業形態には、 ① 教員がインターネット上のWebGISやGISソフトを使って教材を作成し提示する授業形態 ② 高校生がGISを操作しながら学習する授業形態 の2種類が考えられる。地理基礎が必修故にAからD段階までの4段階が、現在では想定されている。 <A段階:GISスキルレベル1> インターネット環境のみ必要で、高校生がWebGISサイトから既成の電子主題地図を見るスキルレベルこの段階では、GISで主題図を作成しない。 <B段階:GISスキルレベル2> 各学校でGISソフトが導入されておればよいが、WebGISを利用すると学校にGISソフトがなくとも可能である。高校生がWebGISサイトから既成のデジタル主題図をダウンロードし、GISで簡単な主題図などを作成するスキルレベル <C段階:GISスキルレベル3> GISソフトが必要になる。高校生がGISwebサイトからちずだけでなく、統計データなどもダウンロードし、GISで主題図を作成するスキルレベル 。 <D段階:GISスキルレベル4>)高校生がGISで主題図を作成して、GISの空間解析機能を使用し初歩的な空間分析ができるスキルレベルである