抄録
北海道尻別川は日本有数の清流として知られ、羊蹄山やニセコ連峰などによる豊富な湧水を誇る河川である。しかし、尻別川についての研究は少なく、流域全体の水文特性の把握は行われていない。本研究では2012年5月より1年間の調査を通じ中流域規模での水質組成と季節変動を把握した。各支流単で水質組成は大きく異なり、本流中流部では酪農などによる農業排水によりpHがアルカリ性を示すが、ダムによる堰き止めや基底流出などにより流域単位での影響は少ない。支流流域ごとにみると羊蹄山南麓ではHCO3-が高くみられ地質の影響を強く受けている。また、イオウヌプリを起源とする支流ではSO42-により酸性を示し、本流への影響がみられる。本研究により、尻別川流域では地質や土地利用の影響を受け多様な水質組成がみられ、融雪期における融雪水の流入過程に流域に異なりがみられた。今後はタンクモデルを用いた中流域単位により負荷量を算出しより詳細な流域解析を進めたい。