抄録
19世紀後半から石見地方で生産された窯業製品(石見焼、石州瓦)の流通について国内外の現地調査を行い、その流通圏と日本海海運による物流との関連を考察した。結果として、①北海道~本州にかけての日本海沿岸の広い地域で、島根県西部で鉄道が敷設する以前からの石見焼が流通している。石州瓦も同様であるが、数は少ない。②九州~瀬戸海~近畿地方にも石見焼、石州瓦が散在するが、他産地のものが多い。鉄道敷設の送れた豊後水道沿岸地域で戦前の石見焼の製品が多い。③韓国鬱陵島で近代の石見焼・石州瓦、ロシアサハリン州で近代の石見焼が確認でき、近代の石見地方の窯業製品の流通圏が及んでいる。④石見地方の窯業製品の分布は、近代の日本海沿岸地域の物流が近世からの海運に依存し、鉄道不要の物流システムが継続していたことの指標として有効である。ということが明らかになった。朝鮮半島、旧満州等での調査が今後の課題である。