日本地理学会発表要旨集
2013年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 733
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発表要旨
環境変遷史と「高校地理」授業プラン
*逸見 優一
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抄録
①はじめに 温暖化による、地球環境問題が高校など学校現場で取り上げられて久しい。温暖化を私たちが、日常の身の回りから学ぶためにはどのようなものがあるだろうか。 2012年から2013年、この冬は相次ぐ寒波の襲来と降雪量が多くなっているといわれる。2011から2012の冬と2年続きの寒い冬を私たちは、おくることになってゆくのだろうか。気候学習では2012年前半はラニーニャが終わり、エルニーニョが2012年後半頃からみられてきたようだと生徒諸君には提示した。 私たちのように、地方にいても、全国各地に共通する気候/気象をみてゆくための素材は、土壌サンプル等色々と身近かな、生活場のなかに思いつく。2013年度版の教科書、資料集には、土壌と植生サンプル写真と気候区分ごとのここの対比が容易に高校諸君に認識しやすいページを見るものが登場してきている。②授業題材 報告者は地球環境問題を日常の授業プランに取り入れるために、私たちの日常の身の回りから学ぶ題材をいつも思案してきた。 地方に生活していると農地であったり、森林であったりする場所は、私たちがどこで生活していようとも、身近な生活場の近くに見いだせる。この身近な生活場が過去から現在まで育む様々なものは、たいがいは土壌の中にその役目を終えてゆくと混入して私たちに残してくれる。 報告者はこだわって土壌の中にみるタイムカプセル的な実に多くの過去の情報に気候変動などの学習題材の有用性をかんじてきた。 報告者の勤務校や生徒諸君の住まいの周りには、生活場、生活場、ここの独自の土壌環境がみられる。 授業プランでは、教科書である、「教科書」ともう1つの「教科書である地図帳」、①で提示した補助教材としての「資料集」をベースに、土壌を生活場の環境面から毎年度みてきている。土壌の色彩や土壌中のプラントオパール、珪藻などから過去の過ぎ去った日々の痕跡は、私たちに多くの情報をよびかけてくれる。③高校での学習 土壌をベーストした気候学習は、学習者である高校生の居住地の土壌が題材となる。生徒ここが採取した土壌をプレパラートにのせ、水をすうてき滴下したあと指で少しこねる。このあと封入剤を適宜さらに滴下し、焼き肉用のホットプレートで封入剤が少し泡立つまで加熱する。このあとカバーガラスをかぶせ、軍手などで火傷をしないように注意しながら力を加えて30秒程度指先で押さえながら、冷やしてゆく。この検鏡作業を光学顕微鏡で検鏡してゆく。水田では珪藻、イネ、ヨシ等のプラントオパール、火山ガラス等が検出されることになろう。畑環境ではタケ、ヒゲシバ、麦類などのプラントオパールが検鏡されるだろう。余裕があれば「土色分類帳」等で、色調等をサンプル土壌で同定作業をおこなってゆくとより有益である。サンプルによれば腐植物をみいだせる。腐植物からは土壌環境と農耕地との関係が深めてゆけるであろう。 報告者の勤務校では2012年度は「世界史A」、「日本史A」「地理B」、「現代社会」を担当する機会を得た。 「日本史A」については、現行学習指導要領では、幕末以降から現代までで構成されている。環境変遷史的には「地理B」同様に近世から現代の環境変遷史がメインとなろう。 「世界史A」では、人類の登場から農耕の始まり、いわゆる4大文明辺りまでを大観学習する4月から5月で環境変遷史を毎年度取り上げてきた。「世界史A/B」用資料集でも農耕開始期から4大文明あたりまでの項目では土壌環境に触れられているものもあるが、「地理A/B」用の資料集のようにはいかないので補足プリントで触れてゆく。 「現代社会」では、前半に課題学習を設定し学習する。この中で、環境問題学習項目を選択学習テーマの1項目的に取り上げることで選択学習的に、環境変遷史項目を設定し学習することがプランできる(課題設定学習)。
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© 2013 公益社団法人 日本地理学会
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