抄録
稻垣家旧蔵地球儀については2008年の調査後、製図・整理に遅滞が生じたが、多少の進展を見たので、1. 稲垣家、2. 稲垣家旧蔵地球儀、3.桂川所蔵とされるコ゛ア、4. 球面の世界図とコ゛アの比較、5. 地球儀の製作年代について、報告した。これらをまとめると以下のとおりである。1)稲垣家旧蔵地球儀の直径は358mmで、桂川所蔵とされるコ゛アより想定される球体のそれは453mmである。2)製作年は稻垣の活躍期、1780’s~1835年間であろう。3)地球儀製作には稻垣本人が係わったと考えられるが、彼であれば、円周=365°の錯誤は犯さないであろう。構造上、地球儀に類似した天球儀もあり、天文暦学を学ぶ過程で、天球儀とともに入手された可能性も否定できない。