抄録
地球規模での環境問題への社会的な関心の高まりと呼応して,環境負荷の軽減を目的とした環境技術の開発が近年著しく,このような技術に立脚した環境産業も成長しつつある.しかし環境産業の立地を俯瞰した文献は限られている.この点に鑑み,本稿では,OECDによる特許データを用いて,世界規模での環境産業の立地について概観することを目的とした.結果として,①アメリカ,日本,ドイツ,フランス,イギリスで環境関連特許数の約七割を占めたこと,②既存の産業集積との関係から,環境産業は主に先述した五か国の大都市に集中する傾向があったこと,③たとえばデンマーク・ユトランド半島地域の再生エネルギー関連産業の集積のように,②で示した一般的な立地傾向とは異なる国や地域に環境産業が集積していたこと,を明らかにした.