抄録
1.はじめに
近年,住宅地図,デジタル電話帳など,ミクロスケールの非集計データ(マイクロジオデータ)が整備されている.これらのデータは空間的、あるいは時間的な分解能が高い時空間データであり,他地域より多種多様な土地利用が混在している中心市街地の土地利用を分析する際,有効であると考えられる.そこで,本研究はマイクロジオデータを用いて土地利用データを作成し,そのデータをもとに,中心市街地における土地利用間の隣接性,土地利用の分布性状および土地利用クラスターの分布の結果をもとに土地利用パターンとその規定要因を明らかにすることを目的としている.研究対象地域は水戸市および前橋市の中心市街地とする.なお,本研究における中心市街地とは,中心市街地活性化基本計画において各市が独自に定めている地域である.
2.使用データ
本研究では2008/09年度Z map TownⅡ(建物データ, 道路データ,構囲データ,注記データ)および,座標付き電話帳DBテレポイント(2011年2月)をもとにデータを作成した.主にZ map TownⅡから土地利用区画データを,テレポイントデータから土地利用分類データを構築した.これらから不明な点についてはフィールドワークを行うことで補充した.
3.結果
分析の結果,主に以下のような土地利用パターンを見出すことができた.
1)戸建住宅,月極・その他駐車場については全域に渡って分布し,多くの土地利用と隣接関係があるが,飲食店,衣料品店に関しては隣接の度合が低い.
2)飲食店・官公庁施設・集合住宅・その他小売店などの土地利用は隣接しやすい土地利用パターンを有している.
3)商業的・業務的土地利用のクラスター形成地域は同質の土地利用と同様であることが多い.
4)商業・業務的な土地利用は,幅員が広い道路に隣接する傾向が,一方,住居系・飲食店・駐車場といった土地利用は幅員が狭い道路に隣接する傾向があり,中心市街地における道路幅員の構造が中心市街地の内部構造に影響を与えている.