日本臨床救急医学会雑誌
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症例・事例報告
X線動態画像が病態把握に有用であった重症肺炎の1例
辻井 俊二西 憲一郎岡本 明久小松崎 崇新田 翔桑野 翔太松井 雅貴楠 淑大嶋 圭一内海 潤
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2025 年 28 巻 1 号 p. 68-72

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抄録

症例は67歳,男性。肺腺癌に対して右上葉切除術後,化学療法による薬剤性間質性肺炎を既往にもつ。嘔吐後の発熱および呼吸困難感を主訴に来院し,重症肺炎による敗血症性ショックの診断で気管挿管のうえ,人工呼吸管理となった。臨床所見では経時的な酸素化の改善を認めていたが,背景肺に気腫性変化を認めており,胸部X線では肉眼的には著明な変化を認めなかった。肺の換気状態を知るために呼吸に伴う信号値変化を可視化するX線動態画像解析を行ったところ,当初部分的であった換気を示す領域が経過とともに全体的に広がっており,換気が改善されていることが示唆され,臨床経過を裏づける結果となった。X線動態画像はポータブル環境での撮影も可能であり,低侵襲で多くの情報が得られることから,コンピュータ断層撮影(computed tomography,以下CTと略す)など高度な診断装置を使用する前のスクリーニング検査としても有用性が高いと考える。

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