日本地理学会発表要旨集
2013年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P054
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発表要旨
空中写真測量による詳細DEMを用いた変位ベクトルの復元
─人工改変前の上喜来地区(中央構造線活断層帯・父尾断層)における検討─
*後藤 秀昭
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抄録

1. はじめに 横ずれの活断層は横ずれ変位が卓越するものの縦ずれ変位を伴っており,変位はベクトルで表される。これを用いることで,断層変位の繰り返しの特性の理解や,変位速度の高精度で説得力のある算定が可能となる。 横ずれ断層の変位ベクトルを検討した研究は,活断層研究の黎明期に阿寺断層の坂下地区において先駆的な研究がなされている(Sugimura and Matsuda,1967)が,その後の研究は乏しい。変位基準となる段丘面や段丘崖を横切って延びる明瞭な断層地形の発達はよくないことが大きな要因である。また,人工改変によって変位基準が失われてしまい,測量が不可能となった場合も少なくない。 最近になって,空中レーダーや数値標高モデル(DEM)により比較的広い範囲の地形を詳細に調査することが可能となり,これを用いて変位ベクトルの再検討が行われ,既往研究と異なる成果を得ている(中田ほか,2008)。 本研究では,変位地形が人工改変により消滅した場所を対象に,改変前に撮影された空中写真を用いて測量を行い, DEMから地形測量を行って変位ベクトルの復元を行った。2.研究地域 研究地域は四国東部の中央構造線活断層帯の父尾断層が日開谷川を横切る上喜来地区である。この付近では,段丘面を変位させる明瞭な断層地形が発達しており,これまでの詳しい地形地質調査により変位速度や最新活動の時期や量が明らかにされている(岡田,1973;岡田・堤,1997など)。1990年代始めに,活断層に沿って徳島自動車道が建設され,断層地形は大きく改変され,現在,変位基準を現地で確認することはできない(下図の右)。3.DEMの作成方法 1974年に国土地理院が撮影した約8000分の1空中写真(CSI-74-8)を用いて写真測量を行い,1m間隔のDEMとしたものを用いた。空中写真を実体視したのと同じ程度の判読が可能な画像となるよう測量間隔やブレークラインの設定に注意が払われている。4.地形ステレオ画像による地形面の分類 写真測量で得られたDEMとオルソ写真を地理情報システムに読み込み,変位基準となる地物の位置を正確に定めた。この際,DEMから過高感を強くした地形ステレオ画像を作成し,重ねあわせて利用した。過高感を強めたステレオ画像を用いることで微地形の読み取りが容易になる(後藤・杉戸,2013)。 地形ステレオ画像の判読により,岡田・堤(1997)の低位段丘および沖積面がそれぞれ2面に細分され,上位より低位段丘1面,低位段丘2面,最低位面,沖積低地1面,沖積低地2面に分けられた。また,それぞれの段丘崖および開析谷に横ずれ変位が認められた。5.地形測量と変位ベクトル 変位基準の位置を横切るように断層線に平行な測線を設け, GIS上で地形断面測量を行った。これを同じ座標のグラフ上に展開して変位基準のベクトルを求めた。その結果,後期更新世以降,ほぼ同方向の変位が繰り返され,縦ずれ変位量は横ずれ変位量の12~15分の1程度であることが明らかとなった。【文献】 岡田,1973,地理学評論;岡田・堤,1997,地学雑誌;後藤・杉戸,2013,E-journal GEO;中田ほか,2008,活断層研究;Sugimura and Matsuda,1967,GSAB

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© 2013 公益社団法人 日本地理学会
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