抄録
北海道尻別川は日本有数の清流として知られ、羊蹄山による湧水をはじめ河川と人々の暮らしは密接に関わっている。尻別川関する水質観測は行われているが、流域全体を対象とした水質解明は成されていない。本研究では2012年5月~2013年3月にかけ奇数月下旬に水質調査を行った。地点は本流、2次流以上の支流、湧水を含む50地点程で水質の季節変動を観測した。調査結果から尻別川はNa-HCO3型の水質を示し、下流にかけて溶存物質は増加する。支流にはイオウヌプリに起源するSO4-が卓越する酸性河川や、羊蹄山南部ではHCO3が多く含まれ弱アルカリ性を示すものなど、流域内には多様な河川が存在し地質との関係が見られた。また、融雪期には希釈現象がみられたが、羊蹄山湧水をはじめとする基底流出による供給が多く、顕著な変化は見られなかった。今後はGISを用い小・中流域ごとでの負荷量を算出し、水質形成機構について更なる解明につなげたい。