日本地理学会発表要旨集
2013年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P085
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発表要旨
クック諸島,ラロトンガ島カレカレ湿地の花粉分析
*奥野 充藤木 利之森脇 広河合 渓中村 俊夫
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抄録
南太平洋,クック諸島のラロトンガ島は,サンゴ礁に囲まれた周囲32km,海抜652mの火山島である.Merlin(1985)は,ラロトンガ島の植生を,1)Homalium属(ヤナギ科)の山林,2)Fagraea属(リンドウ科)-Fitchia属(キク科)の尾根林,3)Metrosideros属(フトモモ科)の雲霧林に分けた.今回,同島北東部のカレカレ湿地(S21° 12' 57 .5 ",W159° 44' 23 .1")で2009年8月に採取した堆積物(深度400 cm)の花粉分析を行った.コア試料は0~137 cmが暗灰色粘土質泥炭,137~170 cmが暗褐色未分解泥炭,200~350 cmが樹木片を多く含む暗褐色未分解泥炭,350~370 cmが暗灰色粘土,370~400 cmが赤褐色粘土であった.花粉分析は10 cm間隔で行い,42種類の化石花粉・胞子を検出したが,350 cm以深では抽出できなかった.14C年代は,炭化木片2点(60,130 cm),植物片6点(132,137,140,200,315,340 cm)を測定した. 全層を通じサガリバナ属とヤシ科花粉が優占する.サガリバナ属は最上部で1.3%までに急減している.一方,ヤシ科は上層に向かい増加傾向にある.タコノキ属は最下部で32.3%と多く,急減する.草本のイネ科とカヤツリグサ科は上部で急増する.現在,サガリバナ属(ゴバンノアシ)が沿岸部に優占していることを考慮すると,徐々にゴバンノアシ林が破壊され,その跡にイネ科やカヤツリグサ科、シダ類の草本やタコノキが侵入し,草地が広がったとみられる.今後はさらに分析を進め,いつごろ古ポリネシア人が本島へやって来たのかを論議したい.
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