日本地理学会発表要旨集
2013年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 530
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発表要旨
北上低地西縁断層帯の変動地形と浅部地下構造
*楮原 京子小坂 英輝三輪 敦志今泉 俊文
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抄録
北上低地西縁断層帯は典型的な東北日本の逆断層帯である(図1).その北部の南昌山断層群では,変動地形から山地・盆地境界の断層崖と盆地内に数条の推定活断層が認定されている.また,小坂ほか(2011)によって低地内に,鮮新統に噴出した火山岩類が第四系の上に衝上し,残丘状の小丘を形成していることが指摘されている.しかし,南昌山断層群と小丘の関連性や断層群を構成する活断層の地下でのつながりについては明確にされていない. 夏油川から胆沢川の間に広がる台地の上には,併走する何列もの断層(天狗森-出店断層群)がある.出店断層についてはこれまでKato et al.(2006)等でテクトニックインバージョンの断層であることが分かり,浅層で分岐する断層を伴う高角逆断層であることが知られている.しかし,台地に分布する個々の断層が地下でどのように連続するのかについては不明である.北上低地西縁断層帯の南方延長にあたる仙北平野では,2003年宮城県北部の地震(Mj 6.4)をはじめ,規模こそ小さいものの過去約100年間に1900年(M 6.5),1962年(M 6.5),2003年(M 6.4)と被害地震が頻発している.このことは断層帯端部の変位様式を議論する上でも重要な点であり,特に,この地域に分布する鮮新統の急傾斜構造(一関-石越撓曲線)の性状と第四紀の活動性を明らかにすることが課題と考えられる.本研究では上記のような北上低地西縁断層帯における多様な変動地形と地下構造を明らかにし,さらには活構造としての空間的な連続性を明らかにすることを目的とした.研究を進めるにあたっては,空中写真および地形解析図を用いた地形判読,地表踏査,反射法地震探査,重力探査を実施し,北上低地および周辺地域の地形・地質,地下構造に関する情報を取得した.その結果,南昌山断層群では3条の活断層とその地下延長部に西傾斜の断層形成されていることが明らかとなった.また,地層の重なり合いや各断層の上盤にみられる変形構造の解析から,最も盆地よりの活断層による隆起運動が,低地にみられる残丘状の地形の形成に大きく寄与していることが明らかとなった.天狗森-出店断層群では,既知の断層線よりも東部の地下に伏在する断層が認められるほか,断層群の地表トレースに対応する複数の断層が認められた.ただし,地下深部へ連続しない活断層も複数存在していることも分かった.また,2008年岩手・宮城内陸地震の余震分布が本断層群の地下延長部によく一致していることも見えてきた.また,地質学的に認められていた一関-石越撓曲線は地下につづく高角逆断層の活動に伴う変形構造であり,活動度はC級~B級下位程度であると推定された.発表では,以上の結果について報告すると共に,北上低地西縁断層帯全体を通してみた場合の活構造の連続性について議論する.本研究は平成21年度~平成25年度科学研究費補助金基盤研究A(課題番号:21240074,代表:今泉俊文),財団法人国土地理協会平成24年度研究助成(代表者:楮原京子)の一部を使用し,独立行政法人原子力安全基盤機構の支援を得ました.記して感謝いたします.
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© 2013 公益社団法人 日本地理学会
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