日本地理学会発表要旨集
2014年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: S0204
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発表要旨
「立山黒部」の魅力をつなげる38億年×高低差4,000mの時空の旅
*水嶋 一雄丹保 俊哉水原 登志子
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抄録
■はじめに
今年度日本ジオパーク認定をめざす「立山黒部」は、富山県東部9市町村(富山市、魚津市、滑川市、黒部市、舟橋村、上市町、立山町、入善町、朝日町)および富山湾をエリアとし、陸域で2,769km2、海域で1,135km2の範囲であり、民間主導でジオパークとして、平成24年から活動を進めている。 
■38億年×高低差4000m
この地域の特徴は、海抜3,000m級の飛騨山脈から水深1,000mを越える富山湾までの高低差4,000mの壮大な地形がわずか50km程度で存在していることにある。 地質的には、約38億年前の日本最古の鉱物を含む大陸起源の岩石や火山活動を伴った日本海の誕生を示す地層、世界で最も新しい花崗岩地帯など多様な地質構造をもっている。 さらに、飛騨山脈を中心とした多降雪地帯は、現在も氷河を残し、急流河川は広大な扇状地と湧水帯を形成した。これら水循環もまた本地域のテーマの1つとなっている。このことから、「38億年×高低差4000m! 体感しようダイナミックな時空の物語~雪と水と大地の悠久の営み」を全体のテーマとしている。
■住民主体の積極的な活動
本地域を構成する大地とそれらに関わる生態系や歴史・文化を研究する活動や体験する活動、守り伝える活動は、富山地学会を始め地域全体において積極的に行われてきた。富山県は、昭和49年より全国に先駆けてボランティアによる自然解説員制度を作り、自然解説や環境教育の活動している。 入善町に事務所をおく黒部川扇状地研究所は昭和51年より地理学を中心とした地域研究を行っている。また、広域連携として、平成13年には、新川広域圏(魚津市・黒部市・入善町・朝日町)に、水博物館構想推進室を設置し、富山県と新川広域圏による水博物館構想が進められてきた。この活動は、新川地域全体を1つの博物館「フィールドミュージアム」と捉え、黒部川扇状地研究所や日本黒部学会などと連携しながら、地元の人が語り部となって地域を巡るツアー活動などを行ってきた。 このような活動が、地理学、自然科学、歴史学なども含め各地で様々な活動が行われてきている。立山黒部では、ジオパークの視点から、これらの活動団体が行政の枠を超え連携してくことで、お互いに情報やスキルを共有し、共通の地域として発展することを推進している。
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© 2014 公益社団法人 日本地理学会
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