抄録
日本では2004年7月から非医療従事者によるAEDの使用が認められ、BLSにかかわる知識と技術・手技が日本赤十字社や消防関係機関による講習等を通じて市民へ普及されるとともに、市街地等では公共施設を中心にAEDが設置されてきた。今年はAED導入から10年目にあたるため、AED導入10年目プロジェクト『減らせ突然死-使おうAED-』(http://aed-project.jp/)によって様々な関係イベントも開催されている。BLS講習会等でCPRの方法やAEDの使い方を伝えることがまずは肝要であるが、実際にAEDが設置されている地点やそこへのアクセス方法等の把握も重要であり、これについてもBLS講習会に付随して取り上げられる必要があるだろう。そこで、本研究ではAEDマップの整備状況を概観したい。また、鹿児島県霧島市で公開され、AED設置の空間情報に係るAEDマップに注目し、日本国内や富山県での始めたBLSマップに係る取り組みについても紹介する。 日本におけるAED設置地点等については、行政やNPO法人等によってまとめられ、地域住民等がその情報を得やすいようにウェブサイト等で公開されている。全国規模では、日本緊急医療財団によるAED設置施設の住所の公開や、個人ページである「日本全国AEDマップ」等がある。県レベル・市レベルでは、その多くが都道府県や市区町村のホームページからアクセスできるようになっており、大半が「設置場所一覧」として住所等が公開されている。また、一部については、AEDマップが制作されて設置地点が図示されているが、AED設置地点の情報については、公共施設に限ったものや「日本緊急医療財団」ホームページにアクセスするものも多い。その理由として、①AED設置地点を空間情報として把握する難さ、②設置施設からの情報開示許諾の問題の2つが挙げられるだろう。特に①では大型店舗や自動販売機等様々な地点で設置の増減があり、例えば富山市等の都市域ほどそれらを広域で把握し続けることは難しい。従って、先進的な地域があるものの、全国的にAEDマップを公開している市町村はまだまだ少ない。 鹿児島県霧島市では、2011年4月からAEDマップを同市ホームページトップページからアクセスできる形で同市消防局内のホームページで公開している。AED設置施設からの公開の同意の取得と建物内でのAEDの正確な位置の空間情報等の把握については、霧島市消防局職員によってなされた。また、2014年5月に改定した「AEDマップ」のホームページから啓発資料「AEDを効果的に使うために」をダウンロード可能として、その中で「AEDにアクセスできる経路ごとの所要時間を目安として表したBLSマップ」を閲覧可能とした(http://www.city-kirishima.jp/modules/xfsection/article.php?articleid=4879)。なお、AEDマップとBLSマップは、消防職員によって維持管理を可能とするためにフリーのGoogle Mapを利用している。このBLSマップは、霧島市消防局による講習会や住民同士のワークショップ等で活用される予定である。 なお,本研究は,平成23年度科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金(基盤研究(C)(一般))「BLS環境の定量的把握とBLSマップの作成(研究代表者:岩船昌起)」の対象プロジェクトの一部である。