日本地理学会発表要旨集
2014年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 804
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発表要旨
完新世の火山活動が湿原の形成過程に及ぼす影響
―八幡平山系を例にして―
*今野 明咲香
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抄録

八幡平山系には、広く湿原が存在する北部の八幡平地域と、一部に湿原が存在する南部の秋田駒ヶ岳地域がある。この湿原の分布の差異は、完新世の地形や気候変化が影響していると考えられる。本研究では、両地域の地形や湿原の分布、表層地質を比較することで湿原の形成時期や形成要因を明らかにすることを目的とする。
八幡平地域では平坦面上に成立する地下水涵養型山地湿原が広く存在する。一方で秋田駒ヶ岳地域では、地下水涵養型山地湿原は北部に広く存在するが、南部にはほとんど存在しない。八幡平地域の地下水涵養型山地湿原は泥炭層と狭在するテフラから、完新世初頭に成立したと考えられる。秋田駒ヶ岳地域では、北部の湿原で完新世の中頃に形成されたが、南部では現在でも湿原がほとんど形成されていない。八幡平地域で観察した土壌断面では、総じて安定して土壌層が形成されているが、秋田駒ヶ岳地域では完新世テフラが厚く堆積している。
以上の結果から、八幡平山系では秋田駒ヶ岳南部を給源とする火山活動によって、秋田駒ヶ岳地域の広範囲で地表面が攪乱され、さらにテフラが厚く堆積した。そのため、秋田駒ヶ岳地域は八幡平地域に比べて湿原の分布が狭く、湿原形成も遅れたと考えられる。

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© 2014 公益社団法人 日本地理学会
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