抄録
地理学においては、都市やその周辺部のいわゆる公園墓地の研究はほとんど未着手である。本発表は、墓地台帳を主な資料として、横浜市における平成期の民営墓地の立地や空間構成などについて考察する。明らかになったことを列挙すると、以下のとおりである。
1. 2000年代には、宗教法人墓地の増加が個人墓地の減少を上回り、全体として墓地数が微増している。
2. 2000~2003年は新設墓地数が多い。これは、要件の緩和や経営許可申請手続きの変更が関係していると考えられる。
3. 小規模な墓地が、ある程度コンスタントに新設されている一方で、スケールの大きな墓地は、10,000㎡未満でより大規模なものの割合が増えている。
4. 新設墓地は内陸中央部への立地が多く、海岸部に少ない傾向がある。
5. 旧市域は小規模な墓地の新設が多いが、新市域では中規模、大規模な墓地の立地が多い。
6. 墓地と経営主体との位置関係では、宗教法人が隣接地に墓地を新設する例が多いが、新市域区では、市内の離れた場所(別の区)にある宗教法人が墓地を開発する割合が相対的に高い。
7. 墓地開発以前の土地利用は、樹林地、次いで田・畑であったケースが大部分であるが、旧市域では宅地の跡地が墓地に利用される場合も少なくない。
8. 墓地内部の空間構成については、緑地率30%以上という条例等の基準が、緑地の割合維持に貢献している。
9. 条例等の規定により、駐車場・管理事務所・便所・通路等を含む「その他」の面積の割合が増加し、その影響で逆に墳墓面積の割合が低下している。
本発表全体として、新設墓地の立地や空間構成には、条例等の法的規制が強く影響していることが指摘できる。