抄録
1. 研究の背景と目的
1994~95年に日本人の海外就職ブームが起こったとされるが,近年では就職先として海外を選び,自らの意志で「海外で働く」ことを選択することが珍しくなくなっている.経済のグローバル化の進展に伴い,労働力の国際的な移動が活発化しており,企業活動は国際的に展開し,それに伴って駐在員などが派遣されて国際的な人口移動が生じるが,東南アジアや東アジアに進出している日系企業の場合は,企業から派遣される駐在員の業務支援スタッフとして,日本人を現地採用することが多い。日本における深刻な景気後退に伴う就職の困難さも海外での就職に目を向けさせたといえる.また,海外の日系企業においても,駐在員を減らし,現地採用者へ切り替えたりすることによってコスト削減を図るところが出てきた.日本人の海外就職者についてはThangほか( 2002, 2004)の先行研究があり,発表者たちの研究グループでは,これまでシンガポール,サンフランシスコ,シャンハイを事例として,海外で働く日本人について,現地調査を行ない,それらの研究成果を発表してきた(中澤ほか;2008,中澤ほか;2012)。海外就職者の大部分が人材紹介会社の求人情報を利用して求職活動をしていることから,本研究は,海外で働く日本人の若者の就労と生活を明らかにする調査の一環で,海外就職における人材紹介会社の役割を明らかにすることを目的とし,本発表はその研究成果の一部について報告する.
2. 研究方法
人材紹介会社への調査は,2012年11月から2013年9月にかけてバンコク市内の各社のオフィスにて合計3回の現地調査を行ない,各社の経営実績や会社設立の経緯などについて聞き取りした.聞き取り対象の人材紹介会社は,バンコクの日本人の求人について掲載しているインターネットのサイト「アジアdeお仕事」(http://www.asiadeoshigoto.com/agent/index. html)で挙げられているすべての人材会社に電子メールで依頼して,承諾を得た会社で,バンコクでは最大手の人材会社と中小規模の日本人経営の人材紹介会社である.
3. 人材紹介会社の求人情報
人材紹介会社の求人情報の大部分は,各社のweb上で公開されている.本研究では,A社のweb上に公開されている求人情報の使用を許可していただき,求人情報について国別に職種や給与,就業地,応募資格などについて集計した。求人情報は多数の人材会社に同時に同じ内容で企業から依頼されるため,人材会社による情報差が少ない。シンガポールでは職種では営業職,IT関連のカスタマーサービスやSE,事務職,サービス業など多様な業種の求人であったが,バンコクでは他国に比べて製造業の求人が多いことに特徴があった。また,近年は日本から流通業やサービス業が数多く進出したため,それらの業種の求人が多くなっている。