日本地理学会発表要旨集
2014年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 626
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発表要旨
屏風ヶ浦海食崖の景観を構成する微地形とその評価―「微地形と地理学」グループ発表②
*八木 令子吉村 光敏小田島 高之
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抄録
1 はじめに
 近年、すぐれた景観(景勝地)を地域の潜在的な価値として評価しようとする動き(例えばジオパークの構成要素、観光振興の目玉に位置づけるなど)がさかんである。しかし従来の景観の捉え方は主観的、情緒的で、何がどうすぐれているのか科学的根拠に乏しい。一方、景観を構成している地形、地質、植生、人間活動の痕跡など個々の要素の最新のデータを把握し、その学術的重要性について詳細に論じても、それが実際に目に見えていなければ景観の価値を伝えることにはならない。景勝地の自然の捉え方として、まず現在目の前に見えている現象を正確に把握し、それらを基に地域の成り立ちや全体の景観の意味を示すことが重要と考え、その事例として千葉県北東部の屏風ヶ浦海食崖で行っている調査を紹介する。

2 調査地域と使用したデータ、分類の方針
 屏風ヶ浦は下総台地を削る海食崖で、銚子市名洗町から旭市刑部岬まで、雄大なスケールの崖が約10km連続する。ここには波食による海食崖の後退で上流や下流を切られた谷(風隙、懸谷)や、新しい崩壊跡などが分布しており、消波堤の設置で侵食量が減少しているとはいえ、地形は現在も変化し続けている。なお屏風ヶ浦は、平成24年度に認定された「銚子ジオパーク」のジオサイトのひとつに位置づけられている。
 この海食崖に沿って、約500m間隔で近接撮影した航空斜め写真を使い、崖上の地表面、崖面、崖下について、写真上で見えるもの(地形、地質、植生、人工物など)を判読し、図化した。その方針としては、①統一した基準で空間的にくまなく分類する②いろいろな規模の地形が混在するが、できる限り細かく分類③地層(鍵層など)のつながりを重視④地形(面)と地形を作る地層をセットで考える などである。また垂直空中写真の実体視、崖下(消波堤の上)や崖上からの目視及び測量など、現地調査のデータも利用した。

3 屏風ヶ浦海食崖の景観を構成する要素
 屏風ヶ浦西方に位置する磯見川河口から銚子市三崎町にかけて、崖がどのような地形、地質あるいは人工物などから構成されているかを、写真と説明図で示す(レジメ図1)。

4 景観の見せ方―展望地点の設定
 景観は眺める場所(展望地点)があって初めて成り立つもので、どこで、何を、どう見せるかが重要である。また景観はふつう遠景として捉えられることが多いが、地域の成り立ちを示すためには、中~近景も把握することが必要である。図1の展望地点から見える景観を、遠景、中景、近景などに分けて以下のように説明する。  

 遠景(大地形)(図1の範囲外)
    銚子半島(愛宕山と段丘面):銚子の成り立ち
 中景(中~小地形)
    海食崖と消波堤、懸谷状の谷:波食
    台地地形面(下総上位面など)と台地を作る地層:地形面の形成
 近景(微地形):変化する地形
    香取層新期崩壊
    新しい島
    海食崖型の滝
  自然の海岸線(ノッチなど)
    崖錐 など
  
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