日本地理学会発表要旨集
2014年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 609
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発表要旨
立山・内蔵助雪渓と剱岳・池ノ谷右俣雪渓の氷厚と流動観測
*福井 幸太郎飯田 肇
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キーワード: 氷河, 多年性雪渓, 立山, 剱岳, 流動
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抄録
飛騨山脈,立山東面の内蔵助(くらのすけ)雪渓には,積雪の下に厚さ30mに達する日本最古(1500~1700 y BP)の氷体が存在する.この氷体には複数の礫層がみられ,下流方向にスラストアップする構造を示すことから少なくとも過去には氷河として流動していたと考えられている.しかし,現在,流動しているか否か不明で,現存氷河とはいえなかった.2011年9月~2013年9月にかけて二周波GPSを使って2年越しの氷体の流動観測を行った.その結果,751日間で10,31 cmと誤差以上の有意な流動が観測された(図1a).年間の流動速度は4,14cmと氷河としては非常に小さいものの,現在でも流動していることが判明したため,内蔵助雪渓も現存氷河であると考えられる.剱岳西面にある池ノ谷右俣雪渓で,2012年9月にアイスレーダー観測を行い,厚さ40 m以上,長さ700 mに達する氷体の存在を確認した.2012,2013年秋に行った氷体の流動観測の結果,秋の30,42日間に11~22 cmの流動が観測された(図1b, 1c).流動速度が一定だと仮定して年間の流動速度を求めると1.4~1.9 mになる.この流動速度は,三ノ窓,小窓氷河のそれ(2~4 m/年)につぐ速さであり,池ノ谷右俣雪渓も現存氷河であると考えられる. なお,発表では2013年秋に実施した剱岳三ノ窓氷河と立山御前沢氷河でのボーリングの結果についても簡単に紹介する予定である.
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