日本地理学会発表要旨集
2014年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 214
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発表要旨
旧フランス領インドシナの気象観測資料復元
-ベトナム中部の秋季降水特性変動に着目して-
*遠藤 伸彦松本 淳
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抄録
アジア域における20世紀全体の降水量変動を明らかにするためには特に20世紀前半の降水量データを観測原簿やデータブック等の歴史的気候資料からデジタル化する必要がある.旧フランス領インドシナの気象観測結果は,気象年報・気象月報・雨量年報の形で公刊されていた.われわれは気象庁・フランス気象局に保存されていた気象年報・気象月報・雨量年報を複写または写真撮影した.<br>
ベトナム中部の雨季の降水特性がどのように変動してきたのかをみるために,ベトナム中部沿岸の8地点の9月から12月の雨量データをデジタル化した.Hue(フエ)における,もっとも早い観測は1897年であり,欠測も含むが116年間の降水量変動を概観することができる.ただし1920年頃までHueの観測所はしばしば移転しており,データは必ずしも均質とはいえないかもしれない点に注意が必要である.秋季の総降水量に明瞭なトレンドは認められないが,一方で季節最大日降水量は20世紀前半より後半により大きな値が観測されている.旧仏印では日降水量が0.1 mm以上である日数を「降水日数」と定義していた.降水日数は20世紀前半に相対的に少ない年が多い.近年のベトナム中部の日降水量データによると,ベトナム中部では日降水量が50 mm以上である日を「豪雨日」と定義できる.日降水量が50 mm以上であった日数は,1917年が116年間で最大であり,「豪雨日」が2ヶ月間に21日と著しく多かった.残念ながら1930年代と1940年代にR50をしることができない年が多い. 今後,月降水量・日降水量データのデジタル化を実施する予定である.
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© 2014 公益社団法人 日本地理学会
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