日本地理学会発表要旨集
2014年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: S0302
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発表要旨
京都国際地理学会議と日本の地理学
*石川 義孝
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抄録

1 京都国際地理学会議2013年8月4~9日に、国立京都国際会館を会場に、国際地理学連合(IGU)の2013年京都国際地理学会議(以下、KRC)が開催された。参加者数は、当初予定を大きく上回り、国内688人、海外743人(61ヶ国・地域)、合計1,431人に達し、IGUの地域会議(Regional Conference、RC)としては異例の多さとなった。ちなみに、1980年の東京大会の参加者数は1,542人(国内750名、63ヶ国・地域)であり、KRCの参加者数はこれにわずかに及ばないものの、ほぼ匹敵している。なお、KRCに対する参加者の一般的評価は、幸い、たいへん高かった。8月5日午前に秋篠宮同妃両殿下をお迎えして開会式が行われたが、同日午後から8日にかけて、各種セッションが開催された。プレナリー・セッション9件、コミッション・セッション780件、一般セッション254件、ジョイント・セッション76件、特別セッション8件、ポスター128件、その他1件、合計1,256件の活発な発表が行われた。なお、IGUの国際会議の中心をなすのはコミッション・セッションであるが、KRCではIGUの40あるコミッション(委員会)すべてがセッションを開催した。2 世界の地理学に対する日本の試み世界の地理学における日本の貢献は、様々な角度から考えられよう。大規模な国際会議の誘致・開催が、重要な貢献の一方法であることは間違いない。とはいえ、KRCをなんとか成功裡に終えた今思うのは、これをきっかけとして、英語による業績の発表によっても、世界における日本の地理学のプレゼンスを高めることができないか、ということである。業績にも様々な種別があるが、筆者は英語の雑誌に査読付き論文を日本から多数発表することが最も望ましいと考えている。この観点から、筆者の経験を紹介させていただたい。3 「グローバル化と人口流動」委員会の事例筆者は、2000~2012年までの12年間、IGUの「Global Change and Human Mobility(グローバル化と人口流動)」委員会(委員長はイタリアのArmando Montanari教授)のセクレタリーを務めた。この間、IGCやRCの中でのセッション開催も含め、1年に1~2回の頻度で研究集会を開催した。集会終了後の筆者の重要な仕事の一つは、集会での発表者に、発表内容の刊行に関する意向調査を行うことであった。一部の発表者は成果の刊行の場所を求めているうえ、委員会としては、IGU役員会に活動報告をするさい、口頭での研究発表を踏まえた業績が多数あることが望ましいからである。 こうした意向調査の結果、特に非英語圏諸国からの参加者の間では、成果を、当委員会による編著の所収論文、あるいは特定の雑誌に査読付き論文として刊行したい、という希望(とりわけ後者)が強いことがわかった。そのため、かかる意向を踏まえ、「グローバル化と人口流動」委員会では、Ishikawa and Montanari (2003)を刊行したし、Geographical Review of Japan Series B (2009)やBelgian Journal of Geography (2011)での特集号、などを出した。なお、民間の出版社からの編著の刊行は、経費や刊行までに要する時間の制約のため、実現しなかった。4 査読付き論文のすすめ IGCやRC、あるいはIGUのコミッションが組織する独立の集会の後に、発表論文を所収する特集号が特定の雑誌で企画される場合、これは、そこでの発表者にとって、査読付き論文を刊行するいいチャンスとなる。また、IGUの特定のコミッションのSteering Committee(運営委員会)のメンバーに入っている方は、雑誌の特集号の企画や刊行に積極的に関わっていただくと、日本の地理学の地位向上に貢献することになろう。一般的に、IGU関連の大きな国際会議の直後は、こうした特集号を組みやすい。もちろん、特集号ではなく、通常の号への査読付き論文としての掲載にも、おおいに価値があろう。文献Ishikawa, Y. and Montanari, A. eds. 2003. The new geography of human mobility: Inequality trends?  Società Geografica Italiana(IGU/Home of Geography Publication Series Ⅳ).

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