抄録
中央アジアはユーラシア大陸の中央部に位置し、大陸の水環境の根幹を担っている。中でも、キルギスのイシククル湖は植生が繁茂し、水資源が近隣諸国と比べ恵まれている一方、灌漑による塩害、農薬、工場・観光地からの排水による汚染が将来的に懸念されている。そこで、本研究ではイシククル湖とその集水域を研究対象とし、地域の河川や湖における水環境の現状を明らかにし、問題の明確化を行った。現地水文観測はキルギス東部において河川・地下水・湖を中心に2012年9月1日-10日、2013年8月23日-31日と2回行った。観測項目は、気温、水温、EC、pHであり、持ち帰ったサンプルから、TOCの測定、イオンクロマトグラフィーを使用した主要溶存成分分析を行なった。調査結果から、河川では地域によってSO₄+NO₃の含有量に多少の違いが見られることが分かった。また、イシククル湖は沿岸地域では集水域河川の影響を受け、イオン濃度が下がる。湖心の鉛直分布では、水深30-35mのところで濁度の上昇が確認された。これによって、湖に流入した河川水は水深35-40mの層にあり、湖心部まで到達していることが示唆された。