日本地理学会発表要旨集
2014年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 604
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発表要旨
ボリビア・アンデスのチャルキニ峰周辺における高山植生とリャマ、アルパカの放牧活動
*水野 一晴小坂 康之
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抄録

1.チャルキニ峰周辺における放牧活動 
ボリビアアンデスのチャルキニ峰(5740m)の南氷河周辺地において、高山植生と放牧活動について調査した。南氷河周辺には2世帯が立地し、1世帯(A世帯)が周辺地の土地や家畜の所有者であり、もう1世帯(B世帯)はその家畜を借りて放牧を行っている。B世帯が放牧を行っている家畜はリャマ209頭、アルパカ54頭、羊56匹である。リャマは乾燥した草原を好み、アルパカは湿った草原を好むため、両者は別々の場所で放牧されている。リャマやアルパカは荷役や食肉として重要であるが、乳は利用されない。アルパカの毛はセーターなどに加工され利用価値が高い。家畜のオーナーのA世帯は、世話人のB世帯に放牧の労賃を支払うが、継続して労賃を支払うか、生まれたリャマやアルパカの子供を折半するかをB世帯に選択させている。B世帯は土地を別に所有しているため、新たに得る家畜を連れて将来自分の土地に移動することが予想される。
2.氷河周辺の植生分布と放牧活動
リャマやアルパカの採食植物は表1のようである。氷河末端付近における出現種はPerezia sp.(Perezia multiflora ?)、Deyeuxia nitidula、Deyeuxia ovate、Senecio rufescensの4種のみであるが、そのイネ科のDeyeuxia属(=Calamagrostis属,ノガリヤス属)の草本であるDeyeuxia nitidulaとDeyeuxia ovateは、リャマやアルパカの主要な採食植物である。リャマやアルパカは氷河近くまで放牧されてそれらの植物を採食しているため、リャマ、アルパカの採食行動が氷河周辺の植生に影響を及ぼしていると考えられる。

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