抄録
中部日本においては、夜間の冷却による局地高気圧、昼間の日射による地面の加熱により局地低気圧が発生することが明らかになっている。しかし気圧分布の様子を詳しく捉え、局地性高気圧や低気圧の発生・発達・消滅詳細に解析するためには、気圧を観測しているアメダス観測所の数は多いとはいえない。長野県で5観測所、岐阜で2観測所だけである。 そこで局地気圧系を移動観測で調べるため、0.5hPa以上の観測精度をもつ観測システムを考えた。中川ら(2005)によるSAT、気圧計、GPSを用いた自動車による自動観測システムを基本とし、道路上を移動しながら広範囲に観測する方法を検討した。海面更正気圧を求める際は測定地点のできるだけ正確な標高値が必要であるが、高速道路または一般国道のキロポスト標位置の設計路面標高はともに0.1m以内の精度があるという。気圧・気温・位置・時間を自動測定し、各キロポスト標通過時の時刻をホ゛イスレコータ゛ーに記録し、観測後にパソコン内の各データとキロポスト通過時刻、キロポスト標高から海面更正気圧を求めることにした。 このシステムによる移動観測を2013年8月から10月の間に4回実施した。その結果移動観測で求めた海面更正気圧は近隣のアメダス観測所の気圧値と比べ0.5hPa以内に収まり、求める精度を満たしていることが確かめられた。気圧の変化を詳しく見ると、アメダス観測所データだけでは捉えられない局地的な気圧変動があることがわかった。このシステムによる広域気圧測定が局地気圧系の研究に寄与することが期待できる。 時間的変化の処理が課題であり、気圧は時間的に変化するため、数時間に及ぶ移動観測からある時刻の局地天気図を作成する時、気圧値を推定する必要がある。そのため特定時刻の気圧値を推定する方法を検討した。近隣の気象観測所の気圧変化傾向から、補正する方法や、気圧変化が少ない時間帯を選んで移動観測を実施することなどが考えられる。