日本地理学会発表要旨集
2014年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 623
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発表要旨
米沢盆地北東部,白竜湖付近の地下における後期更新世テフラ
*笠原 天生鈴木 毅彦北村 晃寿加藤 真司
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抄録

1.はじめに 東北日本弧南部に位置する米沢盆地は,脊梁をなす奥羽山脈西方に発達する内陸盆地群の一つである.盆地西縁には米沢盆地西縁断層の存在が指摘されており(たとえば,池田ほか 2002),西側隆起の逆断層で平均変位速度0.4‒0.5 m/kyrと見積もられている(地震調査研究推進本部 2005).盆地の西方には鮮新統の盆地堆積物で構成される玉庭丘陵が存在する一方で,米沢盆地地下では第四系の下位には鮮新統が分布しないことが指摘されている(長江ほか 1991). 米沢盆地の第四系基底付近の年代としては,ボーリングコアの花粉分析結果をもとに約25万年前程度という見積もりがなされている(鈴木 1991).また,米沢盆地北東部に位置する白竜湖岸の地表下19.5 mの層準において姶良Tnテフラ(AT:町田・新井 1976;30,009 ± 189 SG062012 ka BP at 2 σ:Smith et al. 2013)を見出したという報告がある(山野井 1986).しかしながら,米沢盆地における更新統の年代は,堆積物が盆地地下に分布するために不明な点が多く,その多くは明らかではない. 筆者らは,米沢盆地北東部で新たに得られたボーリングコアを観察し,盆地地下に分布するテフラについて新たな知見を得た.本発表ではこれらのテフラについて調査結果を報告する. 2.高畠町深沼で掘削された2本のボーリングコア 米沢盆地北東部に位置する白竜湖の周辺には,北部と東部を盆地縁に,南部と西部を盆地内に発達する小規模な扇状地によって画された,大谷地と呼ばれる湿地帯が広がっている(吉田 1955).本発表で使用するボーリングコアは,大谷地南部の高畠町深沼で掘削されたB7-1-2コアおよびB7-1-14コアの2本である.両者は約200m離れた地点で掘削されたており,掘削深はいずれも約90 mである. 3.ボーリングコアの層相と後期更新世テフラ B7-1-2コアおよびB7-1-14コアのいずれも,全体にわたって泥炭がよく発達しており,ほかにシルト~砂の互層を挟む.中下部の数層準に淘汰の良い細礫層や,まれに径4 cm程度までの礫の薄層が挟まれる.両コアともに盆地の第四系の基底には達していない. B7-1-2コアでは,深度31.59‒31.655 mに沼沢金山テフラ(Nm-KN;62‒65 ka:鈴木・早田 1994)が,深度44.16‒44.23 mにブロック状に挟まれる阿蘇4テフラ(Aso-4;87.1 ± 6.7 ka;青木ほか 2008)が検出された.ほかに深度79.14‒79.16 mに両輝石型のテフラ(B7-1-2L)が挟まれる. B7-1-14コアでは,深度27.33‒27.34 mにNm-KNが,深度39.385‒39.39 mにパッチ状に挟まれる御岳奈川テフラ(On-NG;85.1 ka:長橋ほか 2007)に対比される可能性があるテフラが検出された.ほかに深度75.47‒75.485 mに両輝石型のテフラ(B7-1-14E)が,深度83.97‒84.07 mにガラス質テフラ(B7-1-14G)が挟まれる. 両コアからはATは単層として確認できなかった.また,B7-1-2LとB7-1-14Eは標高・記載的特徴から対比できる. .堆積速度の検討 Nm-KNおよびB7-1-2L/B7-1-14Eの分布標高からみて,両コア間の堆積物はほとんど水平である.Aso-4の深度から単純に堆積速度を見積もると約0.5 m/kyrであり,内陸盆地である会津盆地で最近得られた数値(0.22‒0.35 m/kyr:鈴木ほか 2013)と比較してやや大きい値を示す.この堆積速度は,米沢盆地の盆地床の堆積速度が米沢盆地西縁断層の活動度に依存していると仮定した場合,その平均変位速度0.4‒0.5 m/kyrに対して調和的な値である.

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