日本地理学会発表要旨集
2015年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 713
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発表要旨
地域活性化と地域統合政策としてのジオパーク
*下里 直生
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抄録
Ⅰ,はじめに ジオパークとは地形・地質の保護・保全を行い,さらに研究・教育・観光などに活用することで地域の持続可能な発展を成立させることを目的とする自然公園制度の一種である.ジオパークの評価・審査を行う世界ジオパークネットワークのガイドラインでは持続可能な開発を一体となって行う,ある地理的範囲をもった領域であるとされている.また,ジオパークで扱う地域は,それぞれのジオパークのテーマやストーリーによって左右され,題材としては現在・過去の地質・地形現象や自然景観などが考えられる. 実際に行われているジオパークが扱う範囲を見てみると.現在,日本ジオパーク委員会に登録されているジオパークはほぼ全てが市町村域をその範囲としており,複数の市町村で構成されているジオパークも多く存在する.また,単一の市町村で構成されるジオパークについても平成の大合併以降に成立した市町村での活動が複数存在し,異なる地域性を持つ地域が一つのジオパークとして活動する事例が多く存在する.異なる地域性を持つ地域が連携する課程やその要因,地域活性化への影響を考察する事はジオパークへの申請地域が増加し,多くの地域がジオパークの可能性を検討する中で重要である. そこで本研究では2005年の市町村合併によって誕生した石川県白山市を範囲とする白山手取川ジオパークを対象として,白山市の合併経緯,白山手取川ジオパークの活動,白山手取川ジオパークと地元観光団体との関連について現地での地誌・当時の新聞記事等の文献調査及び聞き取り調査を行い,ジオパークによる地域統合と地域活性化について考察を行う.   Ⅱ,白山市の概要 石川県白山市は2005年に1市2町5村の合併により誕生した市であり,その面積は755.17㎢と石川県内最大である.市の北部は日本海に面している一方で市の南部には標高約2700mを誇る白山連峰が位置しており市内の様相は南北で大きく異なっている.白山市の合併に際しては石川県が合併推進要綱を計画したが,その計画では新市町村の最小人口を決め,その人口以下の市町村同士が合併するといった計画であった.この合併計画では白山市のような広域な合併は計画されていなかったが,隣接する金沢市との合併論議の末に従来の広域行政や手取川流域といった地域性を考慮した結果,現白山市のような広域な市町村となった,またそういった従来あるものを維持する合併であったために合併による具体的なメリットが住民に提示されなかったため,新市の一体感を創出する必要性が生じた.  Ⅲ,白山手取川ジオパークの活動 白山手取川ジオパークは2011年9月に日本ジオパークとして登録された.ジオパークの活動に際して白山市役所内にジオパーク推進室が設置され,この推進室が中心となって白山手取川ジオパーク推進協議会が設置され,その推進室が中心となって白山手取川ジオパーク推進協議会が企画された.白山手取川ジオパークではその目的として優れた地形・地質遺産の保護・保全及び地域活性化に加え,新市の統合と一体感の醸成が挙げられている.先に述べたように白山市内では北部と南部で地域の様相は大きく異なっているが,手取川流域といった共通点を活かし「山・川・海そして雪 いのちを育む水の旅」をテーマに設定した. 白山手取川ジオパークの活動としては大きく地域への普及啓発活動とジオツーリズムによる地域の活性化を目的とするツーリズム事業に分けられるが白山手取川ジオパークでは地域住民に向けた普及啓発活動がより活発に行われており,ツーリズム事業に関しては市内にあるボランティアガイド業界や旅行会社が利用しているのにとどまり,その合併経緯から市内への普及啓発を中心としていると考えられ,ジオパークによる影響は確かにあるものの地域振興への影響が出るには今後の活動の継続が重要であると考えられる.
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© 2015 公益社団法人 日本地理学会
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