日本地理学会発表要旨集
2015年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 803
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発表要旨
 韓国の高校地理教科書における日本に関する記述の変遷
*南 春英
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抄録



 日本と韓国は海を挟んでいる、互いに望見できるほど近い隣国であり、古くから密接な歴史的関係を結んできた。しかしながら、韓国人の日本認識は決して十分とは言えない。それは、日本に対する知識の不足にもよるが、自国中心的教育から得た偏った日本観による面も大きいと言われている。日本では、このような日本観を「反日」と決めつける人もいる。

  本研究では、地理教育の窓口である地理教科書の分析を通して、韓国における日本の地域像の成り立ちを分析する。本稿では主に国際理解、異文化理解としての地理教育という視点から、時代による日韓関係の変化を追い、韓国における地理教育の中での日本に関する記述の変遷を明らかにする。具体的には、韓国における地理教科書が日本という国をどのように位置付けてきたか、また、時代によって記述において何に中心が置かれてきたかなどを分析していく。
 
 歴史教科書は韓国人の日本観を規定するもっとも重要な情報源である。鄭在眞の1991年に実施したアンケート調査によると、韓国の学生たちは日本に対する知識は主に教科書を通じて手に入れ、日本に対するイメージはマスメディアによって形成するという事実が明らかになった(山内・古田1997)。『国史』の構成からみると、先史・古代・中世・近世・近代・現代と区分されている。『国史』の教科書で<日本>は決して少なくない。総計300ページの分量の中で日本と関連する内容を述べているページは、古代4ページ、中世1ページ、近世9ページ、現代ゼロ、などである(アジア史では、概ね1945年9月2日の大日本帝国の降伏(第二次世界大戦終結)を境にして、「近代」と「現代」に分けられている)。ここに明らかなように、分量上の特徴が前近代に比べて近代に圧倒的多く、現代ではほとんど日本を扱っていない。はなはだしくが、1965年の日韓国交正常化条約さえ無視している。それで、学校の科目で現代日本に関する知識は『地理』科目で得られている。韓国学生の日本現代に対するイメージは『地理』という科目を通じて形成されていると言っても過言ではないだろう。

 古今東西という言い方がある。古今は歴史で、東西が地理である。この対比のように、地理教育はしばしば歴史教育と対で考えられる。いいかえれば、歴史教育が時系列に沿って整理して国や世界を考えさせるのに対し、地理教育は、空間的系列に沿って整理し、地域的違いを考えさせる。つまり地理的な観点から国土や社会、世界を考えさせるものである(西脇、1993)。社会全体のグローバル化の現実の中、歴史より国を正しく理解し、付き合っていくのには地理教育のほうの役割が大きい。国際理解・異文化理解では、地理教育が重視されるべきである。

 こうしたことから韓国の地理教科書の中の日本に関する記述の研究は意義があると思われる。

  韓国の1948年~現在使用している地理教科書の日本に関する記述の変遷を四つの段階に分けられる。

(1) 1946年~1963年

(2)1964年~1986年

(3)1987年~2000年

(4)2001年~現在       

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