日本地理学会発表要旨集
2015年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 123
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発表要旨
ガイドツアーにおけるインタープリテーションと参加者の興味の対象の関係
野外巡検で撮影された写真の分析から
*小池 拓矢佐々木 リディア菊地 俊夫
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抄録
1. はじめに
従来の有名な名所旧跡を見てまわるような物見遊山的な観光形態から、地域に眠っている資源を発掘して売り出す着地型あるいは体験型と呼ばれる観光形態に目が向けられるようになるにつれて、観光におけるガイドツアーの役割は重要なものになると考えられる。なぜなら、そこに単に位置するだけでは観光対象として機能しない地域資源に人の目を向けさせるためには、何らかの説明が必要となるからである。寺崎(2004)によると、ガイドツアーとは「ガイドが自然や文化などの題材を使って、単に見るだけでは気づかず知ることができないことを、ツアー参加者の感覚に訴えて気づかせ、驚かせるなどして、興味を刺激しつつ知識や情報を提供する」ものであり、ツアーに参加した観光者はガイドの説明を受けることによって地域の資源を発見することができる。
そこで、本研究はガイドツアーにおけるガイドの案内とツアー参加者の行動の関係性を明らかにすることを目的とした。ガイドツアーにおいては、参加者が移動するルートは基本的に固定されているため、本研究では参加者の行動として、ツアー内で行われる写真撮影を対象に分析を行う。具体的には、ガイドの発言が参加者の写真撮影の行動にどのような影響を与えているのかを測定し、検討する。
また、各種ガイドツアーによって、その対象や参加者は多様であるが、本研究では、大学の講義の一環として行われた丘陵地域の野外巡検を対象に調査を行った。
2. 調査方法
調査は、首都大学東京の観光系の学科が提供する講義「自然ツーリズム学概論」の野外巡検内で行った。巡検は2014年12月7日(日)の12時30分から約3時間、埼玉県所沢市の「トトロの森」と呼ばれる森林や狭山湖周辺を、講義を担当する菊地俊夫教授による説明を受けながら歩くもの(図1)であり、「自然ツーリズムの風景を読み解く-保全と適正利用の調和を考える」というテーマに基づいて行われた。参加者はその多くが首都大学東京の学部2年生であり、全部で20人の参加があった。参加した学生は、巡検で観察したことを踏まえて、自然環境の保全と適正利用の方法と問題点をレポート用紙2枚程度にまとめて、後日提出することになっていた。
当日は、ガイドである教授にICレコーダーとGPSロガーを持ってもらい、参加者である学生には調査者が配布したGPS機能付きカメラで、特に枚数の制限などは設けず、興味をもった事物を中心に写真を撮影してもらった。また、巡検の最後には撮影した1枚1枚の写真に対して何を対象に撮影したのかを、調査者が作成したカテゴリー(動物、植物、構造物など)から選択させ、質問紙に記入してもらった。
発表では、巡検当日の調査から得られたガイドの音声データ、位置情報が付与されている参加者が撮影した写真のデータ、何を撮影したかが記入された調査票のデータから、ガイドが説明を行った地点と写真撮影の密度の高い地点が一致しているかなどについての分析結果とその考察について報告する。
文献
寺崎竜雄 2004. ガイドツアー. 日本交通公社編『観光読本』 174-176. 東洋経済新報社.
著者関連情報
© 2015 公益社団法人 日本地理学会
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