日本地理学会発表要旨集
2015年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P069
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発表要旨
大宰府天満宮の参道における商業空間の変化
*寄藤 晶子天野 香緒理岡崎 綾香
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抄録

1.はじめに
福岡県太宰府市にある太宰府天満宮は菅原道真を祀った神社であり、江戸時代から参拝の地として知られる。近年では、天神からの西鉄バス・電車が増便されたほか、中国からのクルーズ船観光がバスで移動する際のルートに組み込まれ、国内外から多くの観光客を集める。本研究では、こうした訪問者の変化に注目し、高度経済成長期以降の参道の土地利用の変化を、とくに店舗数や業種構成の変化とその背景を中心に明らかにする。
 
2.研究の方法
「太宰府観光案内冊子」「ゼンリン住宅地図」「住宅案内図」をもとに、1973年・1982年・1992年・2014年の参道地図を作成した。また、太宰府観光案内所・参道各店舗で聞き取り調査と参与観察を行い、店舗数や業種の変化、業種転換の経緯などを明らかにした。
 
3.参道の店舗数・業種構成の変化
店舗数は、1973年の52店舗から2014年の61店舗と9店舗増えた。背景には、土地面積の大きい店の分割や、民家の店舗化がある。業種構成をみると、飲食店の減少が目立つ。老舗の食堂では、実質的な食事の提供をやめ、梅が枝餅などの甘味のみの販売にシフトしていた。その背景には、後継者問題や経営者の高齢化により食事の提供が難しくなったことに加えて、観光客の滞在時間の短縮化傾向と、軽食を手に持っての「食べ歩き」行動の増加があるものとみられる。1973年に見られた民家、酒屋や新聞販売店、薬局などの生活品を扱う店舗はほとんど姿を消した。代わって土産・民芸店が目立ち、なかでもチェーン店の進出も顕著である。参道が地元住民の生活に密着していた場所としての意味合いを失い、「観光地」化していったといえる。その「観光地」化の内容も興味深い。1973年当時には、高級博多人形といった博多の民芸品を扱う店が複数あったが、現在では外国人観光客向けに「日本風」を強調した安価な手ぬぐいや扇子、お香などの和雑貨を多く取り扱うものへと変化した。学会当日は地図と合わせて示したい。

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