抄録
本研究では、社会の持続可能性を支える資本ストックとしての社会関係資本(Social Capital)に着目し、その維持・管理・活用(ストックマネジメント)を図るための手法開発を目的としている。資本ストックとしての自然資本や人工資本、人的資本と比較して、社会関係資本は既存統計からの把握が困難であり、社会関係資本自体を測定する手法の開発から取り組む必要がある。 社会関係資本への関心が高まっている一方で、その概念自体のあいまいさや、研究目的と測定手法の適合性、期待する効用や適応されるスケールにも様々なばらつきがあることが指摘されてきた。本研究では、社会関係資本を「社会的ネットワークに埋め込まれた資源」として捉え、リソース・ジェネレータ手法により個人の持つネットワークとその効用に関するエゴセントリック・データを収集する方法を試みた。リソース・ジェネレータ手法とは、チェックリストを用いて回答者がアクセスできる資源の種類を測定するものである。他者に協力を依頼する項目をリスト化し、その協力を得られる知り合いの存在や関係性について質問を行うものである。八千代市で行った質問表調査で用いたリソースリストは、2015年8月に行った地域住民による「つながり座談会」での結果を踏まえて、30の項目を選出した。またリソースの獲得相手先がどこに分布するのかを同居、近所、地域内、市内、市外の指標で把握した。調査は、2016年1月21日~2月1日にかけて、層化無作為抽出した八千代市在住の20歳以上男女3003人を対象に実施し、907人から回答を得た(回収率30.2%)。性別では、男性369人(43.7%)女性499人(55%)、年齢は、20代104、30代125、40代167、50代129、60代174、70代以上198人の回答を得た。八千代市内の地区別回収数やその他概要については、当日報告する。 八千代市において、各リソースの獲得率は概ね高く、獲得率が70%を下回ったのは、9項目であった。またその獲得先はリソースの種類によって異なっており、獲得先のパターンに基づいて、Ward法クラスター分析で5パターンを識別できた。また性別では、女性が男性よりも獲得率が高く、年齢別では70歳以上で他の年齢層と比べて有意に獲得率が低下することが確認された。リソースの平均獲得数をみると、男性平均が20.9、女性平均が24.1と有意な差が出たほか、70代以上の男性高齢者平均では19.1と著しく低い結果となった。その他、地区別分析の結果や数値の解釈等の詳細については、当日報告する予定である。