抄録
オリンピック・レガシーに関して,政府,ロンドン大都市圏局,ロンドン特別区だけではなく,準政府機関である都市開発公社なども開発の指針を作成している。 労働党政権は2006年にオリンピックを実現する責任を持つ準政府機関として,Olympic Delivery Authority (ODA)を設立し,2009年にロンドン市長がオリンピック開催後のオリンピックパークの運営に責任を持つOlympic Park Legacy Company (OPLC)を設立した。また,主たるオリンピック会場が立地するロンドン特別区(Greenwich, Hackney, Newham, Tower Hamlets, Waltham Forest,Barking and Dagenham(2011年参加))は,2006年に開催特別区ユニットを設立し(2013年にGrowth Boroughsに改名),2009年に開催特別区ユニットの開発計画であるStrategic Regeneration Framework (SRF)を刊行した(法的拘束力なし)。 しかし,2010年に成立した保守党と自由民主党の連立政権は,都市開発公社の廃止を決定し,ODAは2014年に,OPLCは2012年に解散した。一方,2011年のLocalism Actにより,ロンドン市長が都市開発公社を設立することが可能になり,ロンドン大都市圏局はオリンピックの開催特別区と連携して,OPLCの後継組織として,2012年にLondon Legacy Development Corporation (LLDC)を設立した。2015年にLLDCはそのエリアの開発計画を刊行し,それは開発エリアに関して5地区の開催特別区の開発計画に代わる開発計画である。 以上,オリンピック・レガシーが立地するイーストエンドの都市計画に関する指針は,中央政府とロンドン大都市圏局および,LLDCと開催特別区のローカルプラン,さらに,法的拘束力はない開催特別区ユニットの指針である。本発表では,それぞれのオリンピック・レガシーに関する記述を検討する。